焦げ臭い女

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咽び泣くワンピース女に美月は同情した。もし自分が同じ状況だったら、せめて自分が何者かは知りたいと思うだろう。可哀想だと思うけど、何故自分を頼りにしてきたのかさっぱり分からなかった。今日まで幽霊を見たこともないし不思議体験もしたことがなかったのだ。 「何で私の前に出てきたんですか?」 「はい…気が付いた時にはこの部屋の前に居たんです。だからこの部屋に住む人に気付いてもらおうと頑張っていたんですが、今まで誰も気付いてくれませんでした。困り果てていた時に、由理さんが知らない幽霊を連れてきたんです。」 「え?由理が?」 「はい、勿論由理さんは気付いていませんでした。ちょっとガラの悪い方でしたが…。どうやら自分達の住んでる場所を荒らしに来たらしくて、その人達の中のひとりが由理さんだったみたいなんですよね。それで怒った幽霊さんが付いて来たみたいです」 美月は去年の夏辺りに由理が「肝試しで有名な心霊スポットにいったけど何にもなかったわ〜」などと言ってガハガハと品のない笑いをしていたのを思い出した。 何もなかったわ〜じゃないだろう!ちゃんと幽霊をお持ち帰りしてんじゃん!美月はその時の事を思い出しちょっとイラついた。 「でも由理さんの守護霊さん凄い怖くてその幽霊さん何も出来なかったんです。多分お祖母様だと思うんですけど凄い強くて近づこうとすると薙刀で私を攻撃して来るんですよ〜。だから私も隠れるようにしていたんです。でも美月さんは、マンションの入口で既に私の存在に気付いてくれました。こんな事は初めてでしたし、それに守護霊さんも…」 美月は後ろを振り向いて自分の守護霊を確認しようとした。勿論美月に見える筈もない。 「え?私の守護霊ってどんな感じなんですか?」 美月は少しワクワクしていた。もしかしたら、スーパー凄い力を持っているのかもしれない。だって他の人は気付かなかったワンピース女に気付いたのだから。 「可愛いうさぎさんです」 「え?うさぎ?人間じゃないんですか?うそ?うさぎ?え?本当に?」 美月は見えないのを分かりつつも何度も自分の背後を確認した。 「キャーッ!やっぱり!」 かぐや姫は甲高い声で叫ぶと、テンション高く美月に抱きついた。
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