焦げ臭い女

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「私がカメになってた時、私の声が聞こえていたでしょ? 普通の地球人ではないと思ってたの!」 美月の肩をがっしり掴んで離そうとしないかぐや姫は興奮して顔が赤くなっている。 「こんな娘が特別だとおっしゃるんですか? 私はただの地球人にしか見えませんがね」 タオルで顔を拭きながら不機嫌そうにイケメンはため息をつくと美月を睨みつけた。 かぐや姫はそんなイケメンなど気にする事なく美月と腕を組むと猫が甘えるように頭を擦り付けている。 「お前は私に気づかなかった癖に『カメなんぞ布でもかぶせておけ!目が腐るわ!』って言ったの忘れてないし〜。この子は一番最初に私の声が聞こえたの、お前が気が付かなかった私の声に」 イケメンはしどろもどろになり脱ぐっていたタオルを頭からかぶって顔を隠した。 「ねぇ幽霊さん、他に何か気が付いた事ってない?」 かぐや姫はテーブルに両肘をついて小さな顔をちょこんと乗せた。 「あの…ここにいる3人とも守護霊さんがうさぎなんです…。でも、かぐや姫さんのうさぎは冠を被って凄いゴージャスそうな着物を着ているんです。そしてそのうさぎの後ろから後光って言うんですか?パァ〜〜っと金色に光っています。まるで年末の演歌歌手みたいです。男の方は洋服を着ていないんですけど、かぐや姫さんと同じ位の大きさなんです。人とあまり変わらない大きさで2本足で立ってます。 でも、えっと…彼女のうさぎは普通のうさぎです。小学校で飼っている様な…。あっ、でも首に可愛らしいリボンを付けています。 すっごい可愛い白いうさちゃんです!」 ワンピース女は身振り手振りを加え一生懸命言葉を選びながら話してくれていていたが、美月は目の前が真っ白になった。 「やっぱり!やっぱり貴方は月人だったのよ!」 かぐや姫は嬉しそうに美月の手を両手でつかみ思いきり左右に振ると、その反動で白くなった美月の体ごとぐにゃぐにゃと力無く揺れた。 美月は守護霊を見られる前から嫌な予感がしていたのだ。何故なら、美月の苗字も『月影』だったから。でも、もうその事を触れる気力もない。ワンピース女より自分を助けて欲しかった。 誰か私は地球人だと言って〜! 美月が口をパクパクさせ声なき声を発したと同時にイケメンの携帯が鳴った。
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