じゃんけん宣言

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 ♢ 「わたし、これからグーを出しますっ!」  闇に宝石箱をひっくり返したみたいに、高らかに響き渡ったその宣言。  ここは、中規模のライブハウス。  私──永露氷雨(ながつゆひさめ)は目の前で拳を掲げる彼女──暁月茜音(あかつきあかね)をじっと見つめた。茜音の、オレンジとバニラのミックスソフトクリームに似た衣装が、頭上のスポットライトを反射して輝いている。私を見つめ返す彼女の瞳には、まるでコルクボードにピンで留めた恒星のような輝きが宿っていた。  茜音からそっと視線を逸らす。その先にあった足元のモニターには、光の中で向かい合う私と茜音が映っていた。私は茜音とは対照的に、ソーダとバニラのミックスソフトみたいな衣装に腕を通している。  唐突だね、茜音。  内心でツッコミを入れながら、私は不意に思い出した。  唐突といえば、私がいま身を置いている状況もそうだった。
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