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昨晩のことがあるからと、レオナは男のいる状態のこの部屋で着替えをさせられることに。
彼は少し離れ、背を向けている中で彼女が支度をする。
本来であればこんなことは、年頃であろう彼女にとっては酷なこと。
しかし彼女は男のあまりの変わり様に何も言うことが出来ない。
そして着替えが終わって振り返り見たその男の背中には、酷く疲労の色が見えた気がした。
その後食事の席に案内された彼女は男の作った食事を摂ることになったが、男の正体が判らないせいもあり不信感で全く食事など摂れるはずもない。
ほとんど口に入れられずに食事は終わる。
「食べられないのかい?……無理もない、私が信用出来ないのだろう。どうせ私とこの家に二人きりだ。次からは君が食事を作るといい」
男の突然の提案に、彼女は面食らった。
「っ、私、料理が出来るかも覚えていないのにっ……」
「出来るさ。私は知っている、しっかりと覚えている。君は私のために料理を振る舞ってくれたよ」
彼女の反論に、男はなんでもないというようにそう返しさらに付け加える。
「……君のその身体にも引けを取らないほど、君が作るものは美味かったものだ」
彼女は男の叩いた軽口に気付くと、嫌悪感にさっと顔をそらし、
「……そんなこと、聞きたくありません……」
そうポツリとこぼす。
男は苦笑し、そして下を向いた。
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