記憶喪失の『レオナ』

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パシッ  レオナの手は思わず男の頬を叩いていた。 「あ、ごめんなさい……。でも、そんな冗談を言われるなんて……」  しかし男は怒るわけでもなく彼女に静かに笑いかけ、優しく抱き締める。 「ああ、愛おしいレオナ。許しておくれ……」  ……やはり自分の中で何かがモヤついている。  この彼に、覚えがあるような感覚はする。  しかし自分を買った“主人”と言われても本当のことかもまだ分からないうえ、彼が見知らぬ異性であることには違いない。  抱き締められたレオナは自分のうちに起こった混乱にビクリと震える。そして必死に手で男を拒絶し腕から抜け出すと、震える足で駆け出した。  彼は仕方がないというように首を横に振り、早足で彼女の後を追う。 「家を出ていくつもりかい?しかしこの家から、君を出すわけにいかない。一歩たりともね。命を落としたくなかったら言う通りにするんだ。君が聞かないというのなら、私にも考えがある」 「ち、近寄らないで……!」  しかしやはり男はすぐに追いつき、彼女を強く抱き寄せた。 「そうだ。君はかなりの臆病者で、酷く混乱をするとすぐに怯えるのだったね。どうしても私から逃れるというのなら、君が二度とここを出られないようにしなければ」  彼女は部屋に連れ戻され、強い力で先ほどのベッドに引き倒された。 「……まだ力が残っていて良かったよ。ではその身体に教え込まなければならないね、君がどのような立場なのか……」  彼女は怯えたまま身体を震わせている。 「……適度な快楽は与えてあげよう、これは君の大切な“義務”だからね。しかし夢中になられては困る。君の身体に、この家から出ないよう言い聞かせるためだ。優しくはしないよ」  男は冷たい声でそう言うと、先ほど着替えたばかりのレオナの服を乱暴にはだけ始めた。
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