1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
紅の翼
大空はばたく 紅の翼
その名は MiG-31
今は函館の亡命記念館でスクランブルダッシュすることもなく、一人500円でたまに来た来場者をコックピットへ乗せながらその余生を送っている。
「付き合お。」
後席の女の子が前席に向かって声をかける。
驚いたように振り向いて固まっている男の子。
その目は青かった。
この国の海と言葉の壁を破ったのは双発のアビアドビガーテル(旧ソロヴィヨフ) D-30F-6ターボファンエンジンだった。
その最大出力151.9kNの力で出来た風穴からやってきた亡命者は「三番目はすぐ来るよ。」と予言した。
事実、亡命はMiG-29、Su-27、Su-35がぞろぞろと続き、果てにはSu-57までが駆り出され、この大量亡命の終盤においては開き直ったようにTu-95でやって来る有様であった。
風防を閉じて改めて女の子が声をかける。
「...返事は?」
父が語っていたように、女性の強さに国の違いは無いのかもしれない。
コックピットの中で口を開きかけている男の子はそんなことを考えていた。
最初のコメントを投稿しよう!