ネコちゃんだあれ?

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 あぁ……どうしよう、来てしまった。だけど、やっぱりおれみたいなやつがあんな若い子と一緒に出かけるなんてよろしくないんじゃないか……?  せっかく誘ってくれた彼に恥をかかせたくはないのでどうにかして服装も見繕ってきたもののこれでいいのか全く自信がない。大体、三十路を目前にここ数年で友人たちも続々と結婚していき疎遠になって、挙句の果てにおれ自身の転勤だからな。だれかと出かけることすら久し振り過ぎてソワソワする。  そりゃあ、おっきなネコちゃんだなんて言われて行くって即答してしまったおれもおれだけど、雪まつりだなんて知ってたら、ほら、もっとさあ。こんなの、おれなんかと二人でほんとに良かったのか? やっぱり今からでも帰ろうか、いや……なんて。こんなに今更考えても仕方のないことばかりぐるぐると考えてしまうのは、結局のところおれは今日会えるのを楽しみにしていたからだし、せっかく仲良くなれたのだから、彼には嫌われたくはないんだよなあ。 「あっ、いたいた、川村さん!」  すっかり聴き慣れた声がして周りを見渡すけれど、あれ? どこだ? 「こっちですよ、ほら」 「わぁっ……! って、え? 鈴木くん……!?」  腕に触れられた気配に慌てて振り向いた先にいたのは……いや、確かに鈴木くんのはずなのだけれど、なんというか、その、 「大丈夫ですか?」 「いや、いつもと印象が違うからびっくりして」 「はは、いつもはネコちゃんたちと接するからそれ用の服装なんですけど。ほら、今日はせっかくのデ……お出かけですし……変ですか?」 「ううん、全然!」 「本当に?」 「うん、なんていうかさ」  変じゃない、変どころかむしろ……スッとしたシルエットのコートとキュッと脚に馴染んだブーツがスラリとしたスタイルの良さを際立たせていて、チラリと見えるハイネックもまた顔の良さを……って、ああ、そんな不安そうな顔しないで! なんならおれのほうが気後れしてるし自分の語彙力の無さが恨めしい。 「えっと、ああ、もう、うまく言えないけど、めちゃくちゃカッコいい!」 「……ッ、はぁ……、嘘でも嬉しい」 「いやおれの言葉が貧弱でごめん、本当にカッコいいよ」 「あっ、そういうつもりじゃ……いえ、ありがとうございます。じゃあ早速行きましょう」  お世辞なんかじゃないってちゃんと伝わったかな? ようやくニコリと笑ってくれてホッとした。 「おれ、この街で冬を迎えるのは初めてだから。案内してくれる?」 「はい、もちろん!」
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