柔らかい君

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仲のいい奴らと談笑しながらどこに遊びに行くか話をする。友達とぎゃあぎゃあ言い合って騒ぐのは楽しいし、1人は絶対無理だからいつも輪の中心にいるように心がけている。 集団で廊下を進んでいると、バサバサと何かが落ちる音が聞こえてきて前へ視線を向けた。その場にいる全員がその音のする方へ注目していて、その先には1人の男子生徒が教材を拾い集めている姿があった。 「あらら〜大丈夫?」 足元に転がっている資料を手に取って手渡してあげると、彼は長い前髪から覗く瞳で一瞬俺の方を見てから、か細い声でお礼の言葉を述べた。そうして、慌てて教材を拾い集めると逃げるように駆け足にその場から立ち去ってしまった。 その後ろ姿を眺めながら、思わずキョトンとしてしまう。 「何あれ」 「さあ?」 友達が顔を見あわせてくすくすと笑う。俺もその輪に混ざって、口元に微笑みを浮かべながら彼の慌てた様子を思い出してクスリと笑を零した。 「恥ずかしかったのかもね」 「えー、なにそれ。てか、なんか暗かったよね。お礼も言わないしさ」 聞こえなかったのだろう。俺の腕に巻きついていた、かなちゃんがそう言って馬鹿にするように言葉を発した。それに皆も同意するけど、俺だけは笑わない。 「お礼なら言ってくれたよ。、あ、てかさ〜もう教室帰んないと授業始まっちゃうわ」 ぽかんとする皆にわざと明るくそう言ってから俺もさっきの彼と同じ方向に歩き出した。教室に着くと、見覚えのある資料が教卓に乗せられていて、教卓の前の席には先程のあの子がいる。 「てか、さっきのって山谷じゃね」 「かなが前の席と変われっていってあの席になったみたいだぜ。まじかわいそー」 「へ〜」 友達が騒ぐのに適当に相槌を打ちながら、彼のしゃんと伸びた後ろ姿を眺める。 (硬そうだよねー) どこからどうみても男だし、おっぱいもない。触れたらゴツゴツしてるんだろうか。腰周りは細い気がする。それから、山谷くんに教材を渡した時、凄くいい香りがした。 それを思い出すと途端に彼のことが気になってきた。逃げられちゃったのもショックだったし、ちゃんと話をしてみたい。それに、あの長い前髪の奥に隠された素顔をちゃんと見てみたいとも思う。
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