第一章・青い瞳の女

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 本田の周りの若者たちは、待ってましたとばかりに笑い声をあげ、囃すように口笛を吹き始めた。この集会を主催した男がYouTubeにアップした動画で、一週間余りで再生回数は1億回を超えるメガヒットを記録していた。 「諸君! すっかりおなじみになった映像だ。中には、この宮殿のオーナー専用のジムに、プール、カジノまで揃っている。さて、そのオーナーとは? 言わずと知れた、わが親愛なる大統領閣下である! 」  煽情的なアナウンスが流れた後、LEDビジョンの映像は、ロシア連邦大統領、ワシレリー・ベゾブラゾフ氏の顔に切り替わった。大統領が口を開けて笑うたびに金歯が光り、顔の周囲をルーブル紙幣が飛び交った。会場は、拍手喝さいと大爆笑の渦に包まれた。 「アーニー! アーニー! アーニー! アーニー!」  再び、若者たちの連呼が始まった。 やがてLEDビジョンの映像は、『ベゾ』大統領から再びブロンド髪の鋭い目つきの男に変わり、ステージ上に当人が登場した。一九〇センチ近い長身にすらりと伸びた長い足。デニムのジーンズと黒皮のジャンパーを身にまとい、マイクを手に音楽のリズムに乗るように歩くさまはこれからシャウトし始めようというロック歌手を思わせた。
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