景星

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ある日、彼が暫く出張で会えないと電話があった。寂しいけどいっとき我慢だとこの時は思っていた。その数日後、一通の通知が届く。カード会社からだった。内容は、残高不足で引き落とし出来なかったとのこと。 「おかしい。計算ではまだ五百万くらいは残っているはずなのに」  そう思い、久しぶりに記帳をすると残高は八八一円。それまでの履歴を見ると、二十日前から一日ごとに約五〇万円ずつお金が下されていた。合計四九〇万円。身に覚えがない。そして、最後に四〇万円が引き下ろされているのは、彼が最後に会いにきた十日前だった。 「そんなはずは」  銀行カードをしまっているところを確認する。そこには、確かにカードはあった。 「でも、入っている向きがいつもと違う」 まさかと思い、彼に連絡をかける。しかし、通話口からは『おかけになった電話は、現在使われておりません……』というアナウンスが流れるばかり。 「うそ……。でも、仮にそうだったとしても暗証番号は、あっ!」  私は迂闊にも誕生日を暗証番号にしていた。誕生日は彼も知っている。 それから悲しみに暮れる暇はなかった。請求書と催促におびえる日々。最近は、あの日参拝した神社で怨霊に襲われる夢ばかり見るようになった。
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