勝者は彼に告白を

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 しかしその瞬間いきなり突風が吹き、それによってグラウンドに刺さっていた小さな立て看板が飛ばされ、梨花に襲い掛かった。  それに気づいた木坂は梨花の腕を掴み、慌てて自分の方に引き寄せる。 「危ない!」  木坂によって守られる梨花。  しかし、このままでは木坂に立て看板が当たってしまうだろう。梨花はそう思い、木坂を勢いよく押し倒してその上に覆いかぶさった。  梨花が守ろうとしなければ木坂は大怪我を負っていたかもしれない。  そう思った瞬間、梨花の中で魔女への怒りが爆発する。 「何してんのよ、魔女! 私に攻撃するならともかく木坂先輩を巻き込むんじゃない! 本当に木坂先輩のことが好きなら、先輩の幸せを願いなさいよ! 先輩は私が守る!」  梨花がそう叫ぶと、突風は止み、立て看板は見えない壁にぶつかったかのようにその場で落下する。  まるで仏の加護のようであった。  木坂に覆いかぶさった状態で勢いのままに自分の想いを叫んだ梨花。彼女を見上げる木坂は頬を赤らめて戸惑っていた。 「あの、さっきのは……」  木坂が梨花に訊ねる。  ここまで近づいているというのに、これ以上不幸が起きる様子はない。それどころか、どこからか黒猫の大群が現れ、二人を囲んで祝福するように鳴き始めた。 「……もしかして、認めてくれたの?」  梨花は見えもしない魔女に問いかける。だがもちろん答えは返ってこない。  肯定の沈黙だろうか。ともかく呪いに立ち向かい勝利した梨花は、これまで積み上げてきた想いを言葉にする。 「あの、木坂先輩……私」  それは魔女の呪いに打ち勝つほどの恋の魔力。梨花は勝ち取ったこの場所で幸せの旗を掲げた。   「先輩のことが好きです、付き合ってください」
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