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ほんと? と彼女が覗き込んできたので、棒を彼女の方に近づけた。まだすべて食べ終えたわけではなかったが、「あたり」の文字ははっきり読める。
「久々に見た」
「わたしも」
わたしたちがいるのは、学校と家の中間地点にある公園だった。部活のあと公園前のスーパーでアイスを買い、公園内のベンチに座って食べていた。このあと引き換えに行こうと彼女が提案したので、アイスを食べ終えてから揃って水道の方へと移動した。
流水でアイスの棒を洗うわたしの横で、彼女が言った。
「君の勝ちだったね」
「ああ、うん」
そういえば、これは勝負なのだった。
「何してほしい?」
「んー……そうだなあ……」
ここのところ勝負ばかりしていたので、勝ったときにしてもらうこともそろそろネタ切れだった。
ふと思いついて、わたしは言った。
「何かひとつ、秘密を教えてよ」
何も本気で彼女の秘密を知りたかったわけではない。他に言うことが思いつかなかっただけだ。彼女のことだから、秘密なんてないと返してくる可能性も十分あったし、それならそれで構わなかったのだ。
「秘密、ね」
口数が減ると美少女度が上がって、途端に知らないひとのようになる。彼女いわく、まるで夏みたいに暑い日だったというのに、わたしが感じたのは背筋を駆け抜ける冷たさだった。
「誰にも言ったことなかったんだけど」
子どもの遊ぶ声や、車の走行音、鳥のさえずりが、一瞬消えた。ジャージャーと、水道の蛇口から流れる水の音しか聞こえない。
「人を、殺したことがある」
ジャージャージャー。
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