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ここは異世界ですか?
私は、澤田絵令。
今はこのリオネルシア城で、おもてなし係を拝命しています。
この国アレーラ王国、世界地図には載ってはおりません。ということは………そう! 言わずもがな、ここは『異世界』ということに相成ります。
ありがちな話ではありますが、勤め先の会社の階段から転げ落ち、頭を打って気を失っているうちに異世界へ。目を覚ますと、このお城のとあるお部屋のベッド。
「いてて……私、階段から落っこちて……」
頭を打ったのか、少し頭痛がしました。ようやく起き上がり、辺りを見回します。が、そこには誰もいません。
驚きました。そこはマンガや映画でしか見たことのないような豪華なお部屋。アンティーク家具はもちろん、自分が今まで眠っていたであろうベッドもふとんもクッションもふかふか、そのベッドには天蓋が付いていて、金色の天使やリボンの装飾が施されています。
どこからどう見ても豪奢で華美そのもの。
あまりに煌びやかな部屋なので徐々に居心地が悪くなってきた私は、よいしょとベッドから起き、そしてドアを開けて部屋の外に出ました。
「……ここって……どこなんだろう?」
会社の階段から落ちただけのはずです。最初はもしや夢? と思い、自分の頬を平手打ちしてみましたが、どうやら夢ではない様子。部屋を出るとそこは左右に長く続く廊下。廊下の窓から外を窺い見ると、なんと広く美しい中庭が。
「わあ、ステキ!」
両側にはバラ園。そして中央には大きな噴水があり、水をたたえています。緑が生い茂り、植木が綺麗に刈り揃えられ、それはそれは手入れの行き届いた美しい中庭でした。
「って、ほんとここはどこなんでしょうね?」
??? の頭で廊下を進み、うろうろと探索していると、廊下の向こうからひとりの女性が小走りで突進してきます。
「まあまあまあ! お嬢さま! 目をお覚ましに? どこもケガはございませんか?」
そのお方は、白いシンプルなエプロンとフリルのついた帽子を身につけていて、その清潔感溢れる真白は、彼女の持つ褐色の肌に映えて、よくお似合いのようです。
顔の中心にあるそばかすで、まだあどけなさの残る雰囲気。28歳の私よりもお若そう、というのが第一印象です。
見知らぬ女性にお嬢さまと呼ばれ、私はさらに混乱してしまいました。
「えっと……ここはどこでしょうか?」
「リオネルシア城でございます。玄関中央の間にある階段の下に倒れていたところを、リュミエルさまがお見つけになって、介抱されていたのです」
「どうして私がこんなところに……」
頭を打ちつけているからか、それともこの夢のような状況に混乱しているのかはわかりませんが、考えがまったくまとまりません。
「外からいらっしゃった方ですよね? どうして? なんで? は、こっちのセリフですよ! 完全にこれ不法侵入ですからね。……もう慣れましたけど」
確かに! 不法侵入です!
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