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こんな所に知り合いが?
「不法侵入は謝ります。が、私も意識を失っているうちにここへ。どうしてなのか訳がわからなくて……」
「……まったく外からいらっしゃった方は、みなさんそう仰られるんですよね。とにかくリュミエルさまの仰せですから、仕方がありません。私もやることが多くて忙しいので、さっさと館内を案内させていただきますよ。付いてきてください」
(外からいらっしゃった方はみなさん……?)
女性はリサさん。この城の侍女とのこと。目覚めた私の世話をするように言いつかっていて、私は数ある部屋の一室をあてがわれました。
「私は澤田絵令と申します」
「では、エレさまと呼ばせていただきます」
この城の館内説明、いえ、まずはこの国のこと、王室のことなどをこと細かく聞いている間、リサさんは私の洋服を着替えさせ、髪をブラシで梳き、薄っすらと化粧をほどこしていきます。
着たことの無いようなデザインのドレスです。ルイ16世とかそこら辺の英国貴族が着ていたような、クラッシックなデザインです。が、そこまで派手でもありません。ブルー系の落ち着いたお色目で、スラリとしたシルエット、控えめに付けてある胸元と袖のフリルがとても可愛いのです。
が、私といえば上の空。
私の身支度が終わるころ、私はようやく自分が置かれた状況を把握し始めました。
アレーラ王国、リオネルシア城。この国の第二王子、リュミエル殿下が居住の城。そこになんらかの理由により、飛ばされてしまったのだと。
「そのリュミエルさまという方は今?」
まだ俄かには信じられないような自分の状況下において、ただ、介抱してくれたお礼をと思い、そう問いました。
「リュミエルさまはご多忙なお方ですので、私たち下っ端の侍従がここでお見かけすることは滅多にありません。ですが、エレさまはお客さま(?)でございますから、お戻りになられた時にお声掛けがあるやもしれません。エレさま、本日の夕食は午後5時に。そのころにまた呼びに参ります。それではこれで失礼致します」
私はこの状況をさらに把握しようとしましたが、あまりの展開の早さについていけず、そこで小一時間、ぼけっとしてしまいました。脳がフリーズした、ということです。
「まあでも考えてもしかたがないですね。ちょっと散歩でもしてみましょう」
城内を歩きっからかして、見取り図を頭の中へ。
もちろん窓から見下ろしたあの素敵な中庭にも、足を運びました。
庭師の方が数人、お花や植木の剪定をされています。異世界(この時点ではまだ未定)とはいえ、見たことのある花が一面に咲き誇っています。
庭師の方々は、庭師とは思えないエレガントな作業服に身を包み、花切りバサミを用いて、パチンパチンとバラの木の形を整えていきます。すでにバラの季節なのか、大輪の花を咲かせているのもあり、とても綺麗です。
「綺麗なバラですね〜」
つい、感嘆とともに呟いてしまいました。庭師の方々が一斉にこちらを見ます。
「あ、お仕事のお邪魔をしてすみません」
私がアセアセ立っていると、「澤田さん! 澤田さんじゃないですか!」
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