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レタスで飢えはしのげますか?
女の子とデートをしたことがないので、要領がわからなくてすんません、とカンジさんがテレテレしきりに仰るので、私はかぶりを振り、
「いえ全然です。っていうか情けないことに私もなにも用意できなくてですね。実はお弁当を作るつもりだったんですけど、料理長のサイさんが、私に包丁を握らせてくれなくて……」
私は今朝のことを思い出しながら、ことの顛末を話し始めました。
「サイさん、すみませんが厨房を少しお借りしてもいいですか?」
トントンと調理場をノックし、入ります。すでにその時点で、サイさんは慌てに慌てていらっしゃいました。持っていたマッシャーをシンクへガシャンと盛大に落としてしまうほどに。
「え、な、なにをするわけです? どうしてです? なんでですか?」
ささっと落としたマッシャーを拾い上げ、そのままボールへと向かって何事もなかったように、マッシュマッシュしています。
「? 今日私、お休みをいただいたので、庭師のカンジさんと公園に行く約束をしていまして。お弁当を作って持っていきたいんですが」
「弁当ですって? ダメダメダメです! エレさんに包丁は持たせるなとの命令ですから。ちなみに公園とはどこの公園ですか?」
「??? なぜ包丁を持ってはいけないのですか? それはどなたからの命令です? ちなみに城下町の西側にある公園です」
「だだだ誰でもいいでしょう。とにかく厨房には入らせないようにとのことですから、出てってください! ちなみに公園には何時頃に行かれるのです?」
取り付く島もありませんでした。ぐいぐい背中を押されて、仕方なく集合時間を申し上げて、厨房から出た次第です。
いえ分かってます。
「ぜっっっったいレオポルドさんね」
レオポルドさんは色々と、アレダメソレダメと何度もダメ出ししてくるんです。
「そんなわけで、今日のお弁当はコレで我慢していただけませんか?」
カバンからビニール袋を取り出しました。中にはレタスがひと玉入っています。
私は精一杯の笑顔で、カンジさんに差し出しました。
「仕方なく包丁が不要なものをと、厨房を追い出されるすきに。新鮮なレタスです。さあ千切って食べましょう」
若干引き気味のカンジさんに、レタスを勧めます。
いや俺は生野菜はちょっと……あらサラダはお嫌いですか、とやり取りをしていると、そこへ救世主が現れました。
公園の中に一台のキッチンカーが入ってきたのです!
なんたる奇跡。この前、城の中庭で見たキッチンカーです。
「あら、良いところに! カンジさん、あれはこの前、私が話していたキッチンカーですよ!」
「へえ、この世界にもあるんっすね」
「『アメリカンドック』が最高なんですよ!」
「うまそう! 食べたいっすね! 俺、奢りますよ」
「ありがとうございます」
キッチンカーに近づいていき、すみませんと声を掛けると。
窓が開き、中からあのイケメン店員さんが対応してくれました。
が。
「まだ食いものができてないから、そこら辺で待ってろ」
ぶっきらぼう、そしてさらにぶすくれた顔で言うではありませんか。
「なんだとこのやろ、」
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