まつりの憂鬱

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まつりの憂鬱

 これ、早瀬川まつり。 ほらこの、チャコールグレーのロングコートの襟から、ベージュのパーカーのフード出して、立ち飲み居酒屋でボストンクーラーばっかり呑んでる彼女。髪をピンクに染めて、アラレちゃんみたいな眼鏡かけてる子。 隣にいるのは大学時代の同級生の藤原美鈴(みれい)。綺麗めの花柄のワンピースに白いコート。見かけに寄らず、こっちはちゃんぽんでなんでもいけるタイプ。 早瀬川まつりは、きょうで三十歳と一か月と二日。三十路に入りたてほやほやの彼女には、いろいろごちゃまぜにして掃いて捨てたいほどの悩みがある。 仕事は、いまはそこそこうまくいってるけど、自由業だから先行きは不安だし、自分はこのまま結婚せずに終わるのか問題とか、喉元に突き付けられたナイフのように、ぎりぎり迫る。 ああ、この不安を二か月前の二十九歳だったときの自分に教えてあげたい。
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