みつるくん

1/1
前へ
/14ページ
次へ

みつるくん

 見ると、ゲーム内のあちこちでいちゃこらしているアバターたちが。 私、なんか一生懸命働いちゃって、ひとりぼっちになっちゃった。 ああ、ここでもぼっちなのか。寂しい。泣いちゃいたい。 ゲームのなかで、ひとりブランコする、まる。 と、まるの家に男の子のアバターがやってきた。 「素敵なブランコですね」  その男の子、みつるくんは言った。 「乗りますか? 二人乗りだから、乗れますよ」  と答えるまる。 みつるくんは三十二歳。年収三百五十万円の会社員。住まいは東京。趣味は読書、好きな食べ物はカレー、好きなペット、猫。 「ありがとう。よろしく。僕、みつる」  そういうとみつるくんのアバターは、ちょこんとまるの隣に座った。 「こちらこそありがとう。私、まる。よろしく」  そう言ったけど、本当は泣いちゃいたいくらい嬉しかった。 ひとりぼっちでもくもくと働くまるに、声を掛けてくれたみつるくん。 しばらくブランコして遊んだ。最初の言葉がみつからない。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加