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美鈴の告白
そんな早瀬川まつり、誕生日プレゼントをもらった。一か月と二日遅れの。ハンズの袋に入っている重いものだ。
「ライト・ラムでしょ。レモン汁の瓶でしょ。ジンジャーエール。シェーカーとコリンズグラス。忘れちゃいけないのが、いぶりがっこ」
美鈴は遠慮なく、袋の中身を狭いテーブルに出す。ここ、居酒屋だぞ、とまつりのこころの声が突っ込む。
「まつり、これなんだと思う?」
得意満面の美鈴に
「ひとりでボストンクーラー作れるセット……」
と答える。
「さては貴様、結婚するつもりだな?!」
美鈴の首を絞めかかると
「待って、待って。まだだから。ちょっと先に、結納だけ」
美鈴は上手にまつりの手を逃れる。
「結納も結婚も同じだ! 二人立ち飲みから逃れようとはいい度胸だ!」
まつりだってわかっている。親友の美鈴が結婚するのだ、喜ばしいことだ。でもやっぱり寂しいのは否めない。焦る気持ちに拍車がかかる。
「おめでとう。結婚のお祝い、なにがいい?」
「まあまあ。まだまだだから、ゆっくり考えといてよ。それに、しばらくは付き合うよ、二人立ち飲み」
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