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長久保、襲来
その三日の間に、家に長久保くんが来た。担当の。
「早瀬川さん! なんで携帯出ないんですか! 死んだんじゃないかと思って、来ちゃいましたよ!」
それはこっちの台詞だ、長久保。なんで電話に出ないのだ。そのおかげで、私は死んでないが、スマホは死んだのだぞ?
長久保はまだあどけなさの残る二十四歳。スポーツマンタイプらしく日焼けして、イケメンと言えなくもない。
そういうところも好きになれない。
「ごめんね。スマホ、水没させちゃったもんだから、もうすぐ新しいの来るから」
「水没ですか?! 早瀬川さん、ドジだもんなあ」
うるさい。やかましい。それ以上言うと、生きて帰さねえぞ。
長久保はどの道訪ねてくるつもりだったらしく、謎のメールの謎も解けた。雑誌の宣伝ページにカットを描けということらしく、ありがたいおはなしなので快諾した。
長久保氏が帰ったあと、手土産のカステラを食べながら、あの男だけはないな、と再認識した。
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