勇者アール

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魔王討滅祭の日、祭りの広場にて飾り付けられた像を見ていたら 「お姉ちゃん!あれだあれ?」と エルフの私に向かって話かけてきたのは名も知らぬ少年だった。 「勇者アールだ」私は懐かしむように知らない少年に答えた。「アールって?だれ?」そう答えてもまただれ?と言ってくる少年に更に続けた「私をいやこの国をこの世界を魔王との一騎打ちの末に救った英雄だ」「すごいひとなんだね!」少年は笑った。 彼がこの光景を見たら喜ぶだろうな。 彼を知らない世代が増えるのはきっと彼が望んだことだから。人間の代替わりが行えるというのは平和だと言うことなのだから。平和を望んだ彼の願いはかなっているのだろう。 先ほど質問に答えた少年が駆けていき視界の片隅から消えるのを確認すると、私は空を見て、彼に祈った パーティの一員にして、私の想い人、勇者アールが最後の一撃で紡いだ世界は今日も平和だと伝えるために。 そして私は祈りをおえて、次の街へと旅立つ。長命な私が彼の見届けられなかった平和な世界を見届けるために。彼にたくさん平和を伝えるために。
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