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幼馴染の優羽は恋多き少女。
僕はずっとずっと前から優羽のことが好きなのだけれど。
優羽はそんな僕の気持ちなんて知る由もなくて…
「また新しい彼氏できたのかよ」
「うん、バイトの先輩」
つい2か月前、彼氏と別れたといって、僕に泣きついてきた。
あの涙は一体なんだったのだろう…
「ねぇ、壮ちゃんはプリン食べるとき、お皿に移す?」
「…は?何、突然。」
「ほら、プチって底の出っ張ったやつ折ってさ、カポって…」
優羽は、そこにプリンがあるかのように、掌をお皿に見立て、カップをひっくり返すジェスチャーをして見せる。
「いや、俺はカップのままで食べるかな…」
「だよねぇ~?」
優羽は嬉しそうに僕に人差し指を向ける。
「先輩はお皿に移して食べたほうが美味しいって言うんだよ…」
「はぁ、味は同じじゃねーの。」
「え~!何言ってんの壮ちゃん、プリンは最後のひとくちが美味しいんじゃない。」
「あ~…」
そういわれれば、優羽は昔からプリンを食べるとき、最後まで底のカラメルの部分を崩さずに食べていたっけ…
そして、最後のひとくちを食べた後の満面の笑みを思い出した。
あの顔が可愛いんだよな…
「あのカラメルを最後に食べたいのね?」
「そうそう!あれをとっておいて、あのカラメルが絡まった最後のひとくち…あの余韻をず~っと堪能したいの。」
「へぇ。ってか、どうでもいいし。」
僕はわざと意地悪に笑ってそう言うと、優羽は「え~、大事なことだよぉ」と、頬を膨らませ、それからニシシと笑った。
好きの裏返しで、つい意地悪なことを言ってしまう僕の性分は幼い頃から変わらない。
「あ~プリン食べたくなったねぇ?」とキラキラした優羽の笑顔を見て
『僕が優羽の最後の恋人になれたらいいのにな』
と思った。
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