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「うざったい……?」
良かれと思っての事だったが、急に心配になってくる。
「やっぱり洋服は、家にあるものから選べばいいよね。美容院とか、確かに大袈裟もいいとこだし」
冷静になってみれば、自分だけが浮かれて、勝手に気合を入れていた。
いつしか扱いに困る女になっている。
その現実に気付き、泉夏は最高に恥ずかしくなった。
「うざったいなんて思ってない。嬉しいよ。本当だ」
自責の念に重く沈んだ泉夏の心を、秀王はすぐさま持ち上げた。
「嬉しくて、だから洋服をプレゼントさせて欲しいって思った。鬱陶しいどころか感激して……俺が勝手に、思考を飛躍し過ぎてるだけなんだ」
なんだか決まりが悪そうな彼の答えは、余計に気になってしまう。
納得したとは言えない泉夏の顔に窮し、秀王は言葉を選ぶ。
「付き合ってる相手の家族に改まって会いに行く機会なんて、そうはないと思うんだ。髪も服装もきちんと正して挨拶にだなんて」
「秀も、お母さんに会いに来てくれたよ?」
「交際を許して欲しいとか、そういう時は勿論行くよ。……後は、もっと限られた場合ぐらいしかないかなって」
明言する事は憚られ、秀王は語尾を濁した。
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