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「……迷惑、じゃない」
結局。
最後はいつも自分の負けだった。
だって、彼のこんな表情は見たくない。
それに──。
泉夏が答えれば、それはそれは幸せに満ちた微笑みを秀王は向けた。
「一番はどうにか理由をつけて、単に泉夏にプレゼントしたいだけなんだ。……後は、自慢したいかな」
「自慢?」
「うん。泉夏の事はとっくに話してあるけど、もしかしたら半信半疑で聞いていた節があるかもしれない。でも実際本人を連れて行ったら、流石に信じざるを得ない。俺には勿体なさ過ぎる恋人だって、絶対びっくりする。自分がプレゼントした服を着た可愛い彼女を『ほら、嘘じゃなかっただろ』って、見せびらかしたい」
「そんなにハードル上げないで。期待外れでがっかりされないように、増々気合い入れていかないといけなくなっちゃう」
湧き起こる喜びに泣きそうになりながら、泉夏はあえて可愛いくなく言い放つ。
「泉夏は何を着ても似合うし、どんな時も可愛い。色々考えてくれるのはありがたいけど、そのままで十分だって本当に思ってる。そこまでされると──」
何かを言いかけた秀王が、口を噤む。
その姿はどことなく焦っているようにも見え、泉夏は眉を寄せた。
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