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真一文字に引き結ばれた口元が、彼女の並々ならぬ決意を感じさせてくれる。
「なんだい?」
「どうしても話しておかなきゃいけないことがあるの」
「何でも聞くよ」
そう言いながら、僕の心臓はどんどん鼓動が早まっていく。
これからどんな衝撃の言葉を聞かされるのか。それを考えようとしただけでも、この場から逃げ出したい気持ちになった。
「私……私ね……」
言葉に詰まり、彼女はそれを押し出そうとするかのように目をぎゅっと閉じた。
「私……私は悪魔なの!!」
「……へ?」
彼女の真剣な表情に対して、僕の口から出たのはあまりに間抜けな響きの言葉だった。
「私、人間じゃないのよ。悪魔なの」
「まさか……だって」
「どこからどう見ても人間だって言いたいんでしょ? だって悪魔だもの。どんな姿にだってなれるのよ」
そう言って、彼女は目の前で犬や猫、そして最後には僕そっくりの姿になってみせた。
「これでどう? 信じる?」
客観的に見る自分の姿がどうにもおぞましく、僕はすぐに音を上げるしかなかった。
「わかった、わかったよ。信じるから、由岐の姿に戻って」
「ありがとう、信じてくれて」
そう言って安堵の笑みを浮かべる由岐。
僕の方はそれどころじゃない。確かにこれは悪魔の手口だ。
「百歩譲って由岐に変身能力があることは認めるよ。けど、さっき我々は教会で結婚式を挙げて、近いのキス迄したじゃないか。悪魔なのにどうして平気だったんだい?」
「バイトの神父にイベント性重視の張りぼての教会じゃあね……」
バイトとか夢の無いこと言わないで。少なくとも僕達の結婚式を取り持ってくれた人なんだから。
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