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「優衣ちゃん、スマホ持ってる?」
「持ってるよ」
「ちょっと確認してみて」
言われるままにスマホを開くと、ロック画面が膨大な量の通知で埋め尽くされていて驚愕した。お母さんだけでなく怜央くんからの通知もある。
今朝学校に行く前に設定した消音設定がそのままになっていて、通知音が聞こえなかったみたいだ。
「すごい連絡来てるでしょ。今、怜央から優衣ちゃん知らないかって連絡あったんだよ。ここ教えといたから、取りあえず親御さんに電話しな」
何度も頷いて、お母さんに電話をかけると、お母さんはワンコールで電話に出た。
仕事の途中で私のメッセージに気付き、すぐに電話をかけたものの出ず、帰ってきてみても家に私の姿はなく、とても心配していたらしい。
お母さんから連絡を受けた怜央くんのお母さんが、家にいた怜央くんに連絡を入れて、怜央くんも探してくれていたそうだ。
「きちんとお礼言うんだよ?」
「うん、ごめんなさい」
「元気ならいいの。そうだ、怜央くん迎えに行ってくれたから、一緒に帰ってきてね」
「……え?」
「帰ってきたらお話聞かせて。じゃあね〜」
「ちょっと待、」
どこにいるのかとか、何をしてたのだとか、一定の会話をした後、お母さんはなんでもない声色で爆弾を落として電話を切った。
「お母さんなんて?」
「怜央くんが、迎えに来てくれるって」
「それは大変だ」
落ち着いた声のトーンと相反して、聖くんの口角が悪戯にどんどん上がっていく。
「酷い、知ってて黙ってたでしょ!」
「ごめんごめん。その方が面白いかなって」
「全然面白くないよ……。どうしよう、どうしよう聖くん。怜央くん来ちゃうよ!」
「はは、俺に言われても」
破顔する聖くんを前に、私は落ち着きなくあたふたすることしかできない。
「優衣ちゃん、最後に一個いい?」
「何?」
「ずっと気になってたんだけどさ、優衣ちゃんは怜央のどこが好きなの?」
さっきまで忙しなく動いていた手足が、凍りついたように固まる。息がしずらくなって、一瞬息を吸うのを忘れた。周りの空気は薄く感じられるのに、顔はサウナの中にいるみたいに熱い。
「あ、来た」
私がまた息を吹き返したのは、あの人が目の前に現れてからだった。
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