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父と過ごした歳月
ぐるる、と唸り声を上げて私は父に反発した。
「雪、ちゃんと座ってお箸で食べるんだ」
私が名もない天使から外山 雪になって半年、父の言葉の意味はわかるようになった。
日常会話は概ね理解したものの、それまで閉じ込められていた温室内での生活とはあまりにも異なる環境に不満や不安を抱き、それを父にぶつけるのは日常になっていた。
「や。くち、いれて!」
当時、私がかろうじて使えた道具は養育係だった人物が使い方を教えたスプーンとフォーク。
知っていたのは頭を通すだけの洋服の着脱とトイレの使い方程度。
風呂は噴水の水浴びだったので、一人でまともに身体を洗うことすら出来なかった。
私の飼い主だった老人は私が人間らしくすることを嫌い、最低限しか物事を教えないよう計らったらしい。
「駄目だ。自分で食べられないなら、ご飯はあげられないよ」
父は大変根気強く私に付き合った。
食事に限らず一事が万事こんな調子で、うまくいかなくなると癇癪を起こして噛み付いたり引っ掻いたりする私を叩くでもなく、時間をかけてわかり合おうと努力してくれた。
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