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屋敷内には老人が雇った身体不具の者ばかりがおり、養女になった当初の私はそれが普通なのだと思っていた。
心身の成長と共に誰かを伴って外出をするようにと父からは申し付けられた。
その殆どは図書館や買い物程度ではあったけれど、外に出れば自然と世の中の違いは見えてくる。
だからある日父に尋ねた。
「お父さん、何故外にはあまり屋敷の中のような人はいないの?」
すると父は僅かばかり唇の端に笑みを見せた。
「私達のような不自由な者の方が稀なんだよ」
私はその悲しげな微笑みを胸苦しく見詰め、父の胸に飛び込んだ。
「私は屋敷のみんなが好き。お父さんは一番好きよ。不自由でないのは良いことだろうけど、不自由な身体でも心が綺麗なのはもっと素晴らしい事だわ」
その言葉に一切嘘はない。
私自身、一般的な人とは異なる容姿をしている。
父は私の髪を染めること、瞳を隠すための色付きのコンタクトレンズをすることを薦めたが、私はそれを嫌がった。
人と違うことを隠すということは、私を慈しみ育てくれた父や周りの使用人達への背信のように思えたからだ。
「お父さんの好きな三色すみれみたいで綺麗でしょう。白、黄色、紫」
父が隠せと言い出すと私はいつもそう言って笑う。
父はそんな私を見ては泣きそうな笑顔を見せていた。
そして彼もいつも同じ事を言うのだ。
「なんて優しい子に育ったんだろう。お前は私の天使だよ」
けれど私にとっての天使は父に他ならない。
私を救い、慈しみ育ててくれた慈悲深い天使。
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