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月も随分と移動して、「おやすみなさい」とどちらからともなく言い、ぼく達は部屋に入った。不思議な気分だった。月明かりがかけた魔法のような時間にも思えた。何だか眠ってしまうのが惜しいような、そんな夜だった。
酒販店で鉢合わせる事はなかったけれど、ぼく達は時折、ベランダで話をするようになった。月が窓から見えたら、ぼくは缶ビールを持ってベランダに出る。うまくすると、女性もベランダに居る、という感じだった。
女性の名前を、ぼくは知らなかった。玄関をちらと見てみたけれど、表札は無かった。ぼく自身も表札は出していない。集合ポストがあって、宅配ボックスも新たにつけられたので、それでも不自由しなかった。
女性はぼくの事を「ミスター・ムーンライト」と名付けたようだ。
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