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真のダンジョン
「まさかこっちが最深部だったとはね」
アンと手をつなぎながら歩くディフィがそう言うと、その前をオレに肩を借りながらひょこひょこと歩くボゥロがこたえる。
「ああ、俺も驚いたぜ。サーチの異能力で、透けて見なかったら気がつかなかっただろうな」
ディフィを圧死から救った大きい岩盤、それこそが階段──の残がいだったそうだ。そして疑問が出てくる。
「だとしたら、どうやって塞いだんだろうな」
オレの疑問にはアンが答えてくれた。
「絶対にそうだとは言えないけど、やりようはいくらでもあるわ。例えば丸太などで足場を作り、下からトラップ床を作って、ひと通り作業をしたあと最後にひとり分の穴から足場を解体して取り出すとかね」
「なるほど、さすが天才考古学者だな」
「わざわざ塞いだ理由は?」
「さあ? ──でも、ごまかす為なら納得できるわ。誰も落とし穴、トラップの中に隠し通路があるなんて思わないからね」
「だとしたら、そこまでして隠したいお宝がこの先にある──と思いたいね」
雑談をしながらライトを頼りに奥へと進む。正直オレはジョンの動きが気になっていた。
「ジョンはどうするのかな」
小声でボゥロに話しかけると、同じく小声で返してくれる。
「まあ3択だよな。ひとりで地上に出るか、その場で立ち尽くすか、それとも追いかけてくるかだな」
「追いかけてきたら」
「ライトでわかるから、その時の態度で対応しよう。新人の暴走は厳しく叱ってやらんとな」
「おいおい、殺されかけたんだぜ。それを叱るですませるのかよ」
「だったらどうする? 殺すのか? ダンジョンの中はある意味治外法権だ。そこにいるメンバーの意見で決まるんだぜ」
そう言われると返す言葉はなかった。殺されかけたことには文句はあるが、ダンジョンでは死にかけることはしょっちゅうだから、それほど恨んではいない。
「──んー、まずは謝ってほしいかな」
その言葉を聞いてボゥロは吹き出して、俺と一緒じゃねぇかと大笑いする。突然の笑い声にアンとディフィが驚いてなにがあったのか訊き、
「殺されかけたのに謝ったら許すのぉ」
「はっ、あたしなら叩きのめさないと気がすまないね、普通そうだろ」
と、怒りながら言う。普通そうなのかな?
肩を貸して歩いているボゥロが抱き寄せて頭をくしゃくしゃになで回す。
「お前、迷宮マスターになる素質あるぜ」
「別にいいよ。それよりボゥロに訊きたいことがある。異能力者について知ってるのか」
オレの質問にアンも食いついてくる。
「そう、それよ、異能力者ってやつ。サーチはどうしてそれができるの? 生まれつきそうなの?」
「いや……生まれつきじゃなくて、ある日突然だな。10歳のときだ……」
どうしてそうなったかまでは話したくなかったので口をごもらせたが、代わりにボゥロが話してしまう。
「10歳というと──あの事故か。シーカーが亡くなったときのか。子供が──サーチのことだが──できたから冒険者を引退して、それ以後はガイドとして生活してたんだろ」
「ガイドって?」
アンが訊く。
「すでに掘り起こしたあとのダンジョンは観光地だからな、そういうところで観光客相手に説明する仕事さ。それだってギルドの仕事だからな」
「もう掘り起こしたあとなら、安全だったんじゃないの?」
「いやまあ」
アンの質問に今度はボゥロが口ごもらせる。そこまで話したんなら隠してもしょうがない。
「オレから話すよボゥロ。その時は未発見の本物のダンジョンだったからさ。もともとオレは親父と一緒にガキの頃からガイドをやってたんだ。そして10歳の誕生日のとき、冒険家にするために本物のダンジョンを経験させようとして連れていったんだよ」
「え、10歳で?!」
「はやく一人前にしたかったんだろうな。ガイドの仕事もたまにひとりでやらされていたよ。で、その日はさすがに親父もオレをサポートに徹しさせたがな」
話しながらもオレとディフィは後ろを警戒する、追いかけてくる気配はない。
今のところ異能力エコーズを使わずに、ライトを頼りに進んでいる。少々使い過ぎたので喉が荒れている感じだ。
「サーチ、それからどうなったの? 話すのがつらいならやめとく?」
アンが心配そうに言うので、話を続ける。
「大丈夫だ。それにこの話をしないと進まないからな。──冒険者パーティー3人とオレたち親子の5人で、昔、盗賊がねぐらにしていたという洞窟に入ったんだ。そしてそこにお宝が確かにあった、そこまではよかったが帰りに事故に巻き込まれたんだ」
「事故って」
「落盤事故が起きたんだ。皆んなとはぐれ、暗闇に独り残されたオレは、恐怖のあまり大声で大泣きした、その時さ、この異能力に目覚めたのは。おかげで洞窟から戻ることはできた。そしてギルマスに事故が起きたことを伝えたんだ」
救助隊によって助け出されたものは無く、ひとりが行方不明、3人が死亡、その中にはサーチの父親シーカーもいた……。
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