パーティー再集

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パーティー再集

 ガレキの山は捜索済みだ、ボゥロはいなかった。  となると落ちた勢いから考えると入口と反対方向、つまり落とし穴のさらに奥にいる可能性が高い。  アンが気になりながらも歩みを進める。とにかくボゥロの安否確認が先決だ。死んでたらそれまでだから解決が早いんだが──そうもいかないか。 ※ ※ ※ ※ ※  ──2週間前、目当てのダンジョンを見つけたオレたちは一旦ギルドのある村へと戻る。そしてギルドダイナーで計画を練りはじめた。  オレが作ったダンジョンマップからすると、かなりの規模だ。おそらく国の史蹟保存委員会レベルだと思う。素人ふたりを連れて3人だけで挑むには危険すぎると判断した。 「どのくらいの人数ならいいの」 アンが訊ねる。 「そうだな……最少人数で行くなら、ベテランがひとりとバックアップがひとり、それにオレたちで5人だな」 「あとふたりか──サーチに知り合いとか……いないわよねぇ」 恨めしそうにため息をつかれる。オレに知り合いがいないのが悪いみたいに言うなよ。 「どうすればいい」 「ギルドに登録しているヤツを雇うしかないだろうな」  カウンターにいるギルマスに、誰か適当なのはいないかと声をかけると、登録リストから数人候補を出し、それぞれに条件を添えて依頼のメールをしたところ、ほとんどが断られたという返事が来た。 「胡散臭過ぎるからねぇ。少人数で呪いの荒野にある発見されたばかりのダンジョンに挑むなんて、国に報告して大々的に発掘調査する案件だろ」 「それはダメ!! どうしても私たちで調査するの」 ギルマスの提案にアンは全力で拒否する。理由を訊かれてしぶしぶ答えたのは、わりと俗な理由だった。 「教授会でけっこう嫌な目にあってるの。そりゃオジサン達にとっては小娘が教授になってるのは面白くないんだろうけどさ、私だって頑張ってるのよ。だからあんたらにはこんな事出来ないだろうっていう実績をみせて見返してやりたいのよ」 「気持ちは分かるけど、ギルドマスターの立場としてはおすすめ出来ないな」 「なんとかなりませんか。サーチみたいに偏屈でも実績があるようなひと」 それを聞いてギルマスはぷっと吹き出し、オレは仏頂面になる。が、感情にまかせて断わってやるなんてことは背後にいるディフィの気配が許さなかった。 「うーんと、クセがあっても腕の立つヤツか……、ひとり心当たりがいるから連絡してみよう」 「どんな方です」 「昔の仲間さ。盗掘のベテランで[迷宮の達人(ダンジョンマスター)]なんて呼ばれてたな。今は引退して大陸中央都市(セントラル)に住んでるはずだが」  ──しばらくしてギルマスから奇妙な顔をして戻ってきた。 「良いニュースと悪いニュースがある」 「どちらからというなら、悪いニュースから教えてください」 「ちゃんと条件を伝えた上での返事はOKだった」 「それが悪いニュースなの? なら良い方は」 「別居中の妻に離婚を申し立てられて慰謝料を請求されてるってさ。ザマァみろ、モテるからって放蕩三昧したツケだぜ」  よほどの恨みでもあるのだろうか、ギルマスが心から嬉しそうに言うので3人は顔を見合わせる。 「どんな人なんです」 アンの質問にギルマスは登録データを見せながら説明しはじめる。 「名前はボゥロ・ダイドー。年齢は40だったかな」  登録データはかなり古いらしくまだ20代くらいの肉体派俳優のようなイケメンが笑っていた。 「わお、すごいイケメンじゃないの。今40くらいならステキなロマンスグレーになってそう」  証明画像を見てアンがはしゃいでる。それを見てなぜか気落ちする。  ちらりとディフィをみると、何とも言えない表情をしていた。 「ボゥロは王族の墳墓をあばくのが得意でな、それゆえ盗掘屋とか迷宮の達人(ダンジョンマスター)なんて二つ名を付けられている。そして手に入れた埋葬された宝石を女のコに贈ったりしてしてたんだ」 「うわ、最低」 「だろ。けどあの見た目で口も上手いから、それでモテるんだよ。品性としては最低だが、ダンジョン攻略の腕前は確かだよ」 そんなヤツとパーティを組むのか。なるほど悪いニュースだ。  オレが断ろうよと言う前に、ディフィが口出しをする。 「はっ、アン、そんなヤツならやめよう。他を探しましょ」 しばらく考えてからアンは首を振る。 「ううん、ギルマスが保証するならその人にしましょう。大丈夫よ、私はそんな人の口車に乗らないわ。ディフィが自信が無いならやめるけど……」 「はっ、あたしがそんなヤツに引っかかるわけ無いだろ」 「じゃあ決まりね。ギルマス、ボゥロにオーケーの返事をお願いね」 ディフィがしまったという顔をするがもう遅い。4人目が残念ながら決まってしまい、5人目もギルマスの紹介による新人冒険者ジョンが経験を積む目的で荷物持ちとして参加することとなった──。 ※ ※ ※ ※ ※  たしかにボゥロのヤツはベテランの働きをしてくれたが、道中べらべらと喋って色々と揉め事をつくるという働きもしてくれた。  みんながウルサイと言ってもやめない、「黙々と歩いていると不満がつのるから、俺みたいなのがいるんだよ」とそんな言い訳にしてたが、最終的にこんな大ミスをしてくれたんだ、いい方にとらえることはできねぇよ。 「なんかどうでもよくなってきたな、ボゥロのヤツ死んでねぇかな」 独り言を言ったつもりだが、手前のガレキから返事がかえってきた。 「つれないこと言うなよ。生きてんるんだからよ」  悪運の強いヤツだなとため息をつきながら、ボゥロの生存を確認した。
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