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暗闇の遭遇
──こめかみに痛みが走り、気がついた。目を開けているが真っ暗で何も見えない。何処だここは……。
身体のあちこちが痛い、今は寝そべっているのか。手を動かし触っているものをなぞる、どうやら石か岩らしい。背中がゴツゴツしている、ガレキか。
「どこからか落ちたのか」
そう口にしたときだった。
「誰かいるの、いたら返事をして」
……女の声だ、聴いたことがある、オレは知っているのか。
「いるぞー。ここは何処だい、アンタは誰だ」
「その声はサーチね、わたしよ、アンよ」
──アン、覚えがある名前だった。好印象と悪印象が入り混じった気持ちがよみがえる。
「サーチ、あなたの異能力なら何処にわたしが居るか分かるでしょ。お願い、見つけて」
俺の異能力?! 能力って……
「カンしてよ」
その言葉を聞いて自然と喉の奥を鳴らした。
カン
その途端、周りの景色が頭の中に描かれた。しかも色つきで。
左右はきれいに揃った石壁造りで、前は長い通路。オレは小山ほどのガレキの上に居て、天井はぽっかり大穴が空いて、その上は石造りの天井だった。
そしてアンはオレから少し離れたところで四つん這いになって何かを探すように首を振っていた。
「そこか。オレはこっちだ」
「見えないわよ。見えるのはサーチだけなんだからコッチに来てよ」
めんどくさいと言いかけたが、暗闇の中で恐怖におののいてるアンに少しだけ悪いと思い、よっこらせと身体を起こし四つん這いになってガレキをゆっくりと進む。
「どこよ、どこにいるのサーチ」
「前だ、目の前まであと2メートルくらいだ」
それを聞いた途端、アンは手探りをしながら前に進み出した。オレより動きがはやい、来てくれるんなら待つか。
などと考えて止まってたら、アンがすれ違いそうになったので声をかける。
「ここだぞ」
耳もとだったので、ひっ、っと驚きの声をだされたが、すぐさま顔を掴まれ引き寄せられると抱きつかれる。
「ああいた、よかった、生きててよかった」
よほど心細かったのか、探検服ごしでも分かるけっしてふくよかではない胸でオレの頭を抱えるように抱きしめる。土埃くさい。
「アン、ここはどこなんだ。頭を打ったらしくて記憶が混乱している」
「トラップよ。ダンジョンのトラップに嵌って落とし穴に落ちたの」
「どうしてこうなったんだ。教えてくれ」
小刻みに震えるアンを抱きしめ返し、落ち着かせる。
「そ、そうね。私たち5人は未発見のダンジョンにある宝物を求めて来たんだけど、最深部の通路奥にそれらしい物を見つけた途端、足元の床が抜けて皆んな落ちたの」
──ああ思い出してきた。この子はアン・ケイツー、天才少女考古学者だ。この子の発案でパーティを組んで大陸東部にあるダンジョンを発掘、そこの調査をしていたんだ。
そしてオレはサーチ・ヴェルマーク。ダンジョン専門の地図屋だ。
「思い出したよアン。それなら他のメンバーを探して、ここを一旦脱出しよう」
「ええ」
アンを抱きしめたままオレは立ち上がった。
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