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「いらっしゃいませ。あら、宇都宮さん。今夜は何に?」
もう2年近くお店へ通うので、店員さんは私達を覚えてくれた。
「こんばんは。今夜はブーゲンビリアがいいな」
「ブーゲンビリア、素敵な花よね。他にある?」
「亜由、何か欲しい?」
「ううん。友都が選んでくれたから、それでいい」
「じゃあ、お会計ね。少し、お時間ちょうだいします」
お会計を済ませ、店員さんがブーゲンビリアの花束を彼に渡した。
「またお越しをお待ちしております」
「――ああ」
店を出ると、彼はまた歩き出した。
「ねえ、どこかへ行くの?」
「うん、最初の噴水公園にね」
彼について行くがまま、噴水公園に着いた。
「あのさ、こっち」
腕を引っ張られ、私は噴水の前に立った。
「――結婚してください」
花束を差し出し、私に告げた。
「ゆっ、友都っ――」
「これからも、ずっと隣に居て欲しい」
涙がブーゲンビリアの花束に流れ落ちる。
「手、出して」
言われるがまま、手を差し出すと、薬指に眩いほど輝く真珠の指輪がはめられた。
「――――最後のデートって、こういう意味だったの?」
「うん」
「これからも、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
「ブーゲンビリアの花言葉、憶えてたの?」
「もちろん、だからリップもブーゲンビリアにした」
薬指に輝く指輪は、永遠に色あせることなく、いつも2人を見守るように輝いていたのであった。
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