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友達の話
「友達が悩み事あるって言っててね、相談受けたんだけど上手く答えられなかったことがあるの。」
そう話を切り出した彼女は、いつもはそうでもないのに、無駄にそわそわしていた。僕はとりあえず頷いて、読みかけの小説を閉じていつものように聞く態勢に入った。
持ち手に指を引っかけ、コーヒーを一口飲む。
「その子が言うには、気になる男の人がいるらしいんだけど、イマイチ関係が進まなくて悩んでるんだって。その男の人はほとんど喋らない寡黙な人なんだけど、たまにポロっと喋ってくれた時にはすごくかっこいい声できゅんとするらしいの。きゅんって何?って思いながらも、とりあえずはお友達になれないかなって…、あわよくば付き合えたりしないかな?ってモヤモヤしてるんだって。」
カップをソーサーにそろりと乗せて、僕は喋ることにした。分かってはいる。でも、あくまで彼女の友達の話として流すことにする。
自惚れるのは良くないことで、彼女が明言しないなら違う可能性もあるんだ。
「その友達はとてもいい人ではあるんでしょう。」
彼女は僕が喋りだすと、プリンに手を付けることなく、テーブルの上で手を組んだ。
祈っているみたいで、正直やめて欲しい。僕は聞き心地の良い言葉を吐くつもりはないんだ。
「でも、よく知りもしない相手を好きになるのは危険だと思いますよ。」
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