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条件
彼女は組んでいた手をほどいて、「いただきます」と小さく呟くように言ってから、プリンにスプーンを入れた。すくい上げて一口。のみ込むまでの間は、沈黙が続いた。
「それはそうだと思う。…でも相手が喋ってくれない以上、知ることはできないし関係性は一歩たりとも前に進まないじゃない?」
人間関係の構築には、双方の協力が必須。確かにそうだが、僕の場合は…。
「そうだ、アオ君が教えてよ。アオ君も似たようなタイプの人だし、私がどうすればいいか分かれば、友達にアドバイスできるしさ?」
「…………。」
彼女はただでは転ばない人らしい。返事に困る。協力したところで、僕にはメリットはない。むしろ、彼女に付き合わされて時間を盗られるだけじゃなく、見限られるリスクまで背負う…デメリットの方が大きい。
「他をあたってくだ…」
「ダメ、似たようなタイプはアオ君しか知らないの。」
彼女からの視線が痛い。付き合わなかったら、それはそれで面倒くさそうではある…。
こうなったら、僕は僕で人から見限られない方法を探す。その実験にも密かに付き合ってもらおう。付き合う以上、条件を付けて。
「わかりました。ただし、条件があります。」
「条件?」
「僕の存在をその友達を含め、他の人には教えないでください。」
「え、なん…」
「二つ目、出来る限りの協力はしますが、踏み込まれたくない質問には答えません。」
彼女が黙って考えている間に、僕はコーヒーを飲む。
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