9人が本棚に入れています
本棚に追加
同棲
「私がファオと同棲!? 」
警察署前にてタバコを吸うサメジマに、ホサカは絶望した顔で叫んでいた。
「ファオは凶悪犯ってわけじゃねぇし、今回の事件を担当している間、いちいちファオを留置場まで迎えに行くのは面倒だろ? 」
「で、でも......」
そこで、ホサカが今まで見てきたファオの奇行が思い出された。マンション二階に住むホサカへ、下の階の住民から苦情がくることはまず間違いなしだろう。
「ファオの方は準備できてるぞ」
サメジマの後ろにいたファオは、キラキラした目でかつ、ワクワクしていた。背負ったリュックの紐を握っている姿は、まるで子供であった。
「いまからえんそくだろ? たのしみだなぁべんとーくうの! あ、おまえにはやんねぇぞ? 」
恐らく、ホサカ宅に住めと言っても聞かないから、サメジマに嘘をつかれてファオは準備をさせられたのだ。
「それが、遠足じゃないんだな」
「え? 」
「お前には今日から、ホサカの家に住んでもらう! 」
ホサカはファオが自分の家に住むことによって起こる障害に絶望していて、ファオは自分が嫌いな人物の家に住まなければいけないということに絶望していた。
「まあ、お前らは仲がいいから大丈夫だろう」
すると二人は、揃ってサメジマに叫んだ。
「「よくねぇよ!! 」」
-ホサカ宅 翌日-
部屋に響く雑音で目が覚めてしまったファオ。1kのリビングで布団を敷いて寝ていたが、仕方なく眠そうに目を擦りながら起き上がった。
「なんのおとだぁ? 」
よく聞くと、水が流れる音らしい。ユニットバスの方から聞こえてきていた。眠いながらも布団から出て音の聞こえる方へと向かった。
「うるせぇなぁ」
そう呟きながら目の前のユニットバスの扉を開けた。するとそこには、裸のホサカが鼻歌を歌いながらシャワーを浴びていた。
ホサカはファオに気づいた後、少々固まった。
「おまえ、なんでむねふくらんでんの? 」
そのセリフを皮切りに、ホサカはファオに自身が持っていたシャワーヘッドを投げつけて叫んだ。
「な、何見てんの変態!! 殺すわよ!! 」
バスルームの扉が力強く閉められた。
「いってぇ......なんであんなにおこるんだ? 」
小学生並の頭脳で考えたが、ファオはなぜ殴られたのか理解ができなかった。女性にこうしたら失礼だとか、食事でこうしたら良くないなどの一般常識がないので、仕方がないことだった。
「ったくー、だからいっしょにすむのいやなんだよ」
シャワーヘッドが当たった頬を撫でながら、ファオはリビングに戻って再び寝始めた。
自分を狙う人物が今正に近づいてきているとも知らずに。
最初のコメントを投稿しよう!