ズル休みハンター

1/1
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 ここは、とある会社。  社長はズル休みする社員が多いことに悩んでいた。  社長は色々試したが上手くいかず、最後の手段として、ズル休みする社員たちを取り締まる部署を作った。  社員たちは、その部署のことを「ズル休みハンター」と呼んでいた。  彼らは、会社をズル休みする社員たちを監視して、取り締まる任務を担っていた。  ある日、電話で「風邪を引いてしまったので休ませて下さい」と言って休んでいた社員の山田が会社をズル休みしていて出かけているのを発見する。 「ズル休みするヤツを、どこまでも追いかけてやる!」というスローガンのもと、ズル休みハンターは、山田を取り押さえるために追跡を始めた。  だが、風邪を引いている山田は風邪を引いていないとき以上に早足で歩き続け、尾行するのに苦労した。  ズル休みハンターは息を切らせながら1時間近く追跡して、ようやく山田を捕まえた。  しかし、山田は「いや、あの、運動した方が、風邪が早く治ると思って…それで…運動してました」と言い訳をして、何とか逃げ切った。   報告を聞いた社長は、「まあ、山田の方が一枚上手だったな」と苦笑いをしてズル休みハンターを責めることはしなかった。  ズル休みハンターは、真面目な社員たちからは恐れられていたが、尊敬されてもいた。  社員たちは、会社のため仕事に真剣に取り組む人々のために、ズル休みハンターが日々奮闘していることを理解していたからである。  ズル休みハンターのリーダー北山は、自分たちの活躍により、会社の雰囲気が変わったことに満足していた。  しかし、ある日、北山の体調が悪くなる。  医者に診てもらった結果、「過労が原因でしょうな」と告げられた。  北山は療養中、働き方について悩んだ。  悩んでいるうちに考え方が変わり、体調が良くなってから会社に行くのが面倒くさくなり、密かにズル休みプランを練っていた。  そして、「ズル休みをするのも人間の性ってやつだよな。働くことは重要だけど、たまには休むことも同じくらい重要なのさ」という考えに至る。  体調が良くなり仕事に復帰した北山は、社員たちに、たまにはズル休みをしてリフレッシュするようにアドバイスをし始めた。  すると、社員たちの笑顔が増えた。  ただし、社長だけは常に真顔だったが。  会社内の雰囲気が良くなり、社員たちは仕事に熱心に取り組むようになった。  ズル休みハンターは、部内で業務内容を見直し、「休むことも仕事のうちだから、たまにはズル休みをしても良し!」という新しいスローガンを掲げることにした。  こうして、取り締まりは緩くなり、ズル休みハンターはいつの間にか消滅していった。  会社と共に……。  (了)
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!