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中学生になってからも、部活がない日はこの公園に集合して、ダラダラとおしゃべりをした。
優樹はサッカーを始めたせいか、みるみるうちに痩せていき、声の高いただの好青年になった。
いつだったか、ブランコで立ち漕ぎするアイツのスラックスから見える足首があまりに細くて、心の底から心配した時があった。あれは確か、体力測定の結果を見せ合った日だ。
「おい優樹、お前マジ最近急に痩せすぎじゃね?」
「そうかな?でもほら、身長も体重も標準だよ」
「マジだ。うーん。西中の測定基準おかしいんじゃねぇの?ほらだって!お前、体力測定の結果あんま良くねぇのに、何故か俺よりA判多いし!……もしかして西中の校長、教育委員会に賄賂を!?」
「まさかそんな」
深刻な俺をよそに、優樹は前下がりの長い前髪をゆらゆらと揺らしながら、カラカラと笑った。
「笑うなよ。俺、マジで心配してんだかんな!変な病気じゃねぇかとか」
「ごめんごめん。本当に大丈夫。自分はあっちゃんをおいて死んだりしないよ」
ずっとそばにいるから、ね?と顔を覗き込みながら肩を肘で小突かれたその時、触れられた部分がぐわっと熱くなり、心臓がバクバクと波打った。わけもわからず、急いで立ち上がり、「俺だって優樹をおいて死なねーよ!」なんて謎の捨て台詞を吐いて、急いで家に帰った事を覚えている。
そうやって、段々と自分の恋心を自覚していったんだ。
初めはもちろんすげー悩んだ。だってまぁ、優樹は男だし。俺も、男だし。このまんま友達でいた方がいいっつーのが最初の結論。だってこの恋は、望みが薄すぎる。
まず、多くの男がそうであるように、優樹の恋愛対象は女だ。だって、フツーに俺とグラビアの話とかするし。「あの女優、おっぱい大きくて可愛いよな」とか言うと「柔らかそうだよね」なんて顔を赤くするし。
そしてさらに、優樹はモテる。出てくる友達の名前はほとんど女だし、カメラフォルダーも女子との写真が多いし。バレンタインもすげぇ数のチョコレートもらってたし。
あ、やべぇ。思い返してたら、すげぇ士気下がってきた。もしかしたら俺に言ってないだけで、もう彼女いんのかも。つーか。つーか。俺に告白とかされたら、ひく、かも。それか友達だと思ってたのにって、怒るかも。
頭ん中、グルグルと嫌な結末ばかり浮かんできて、泣きそうになる。
くそ。負けるな俺。姉ちゃんがいつも言ってるだろう。「デリカシーがないやつはクソ。それ以外はいい男」って。
他の人相手だと若干不安だが、優樹に対して無神経な態度は取ってきてないと思う。
自信を持て中。俺は確実に、「それ以外のいい男」だ。
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