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「いい男って?」
「うおぉ!?」
突然の声に、ブランコごと体を揺らす。急に目の前に現れた幼馴染は、そんな俺のリアクションにカラカラと笑った。
「おい、脅かすなよ」
「いや自分何回も声かけたよ?でもあっちゃん全然気が付かないし、なんかブツブツ言ってるし」
それは悪かったと顔を顰めつつ謝る。
「つーかお前」
「ん?」
「なんでベンチコート着てんの?中、ユニ?」
「んーん。ちゃんと制服着てるよ」
「なんだよ、ジャーン!ってやるやつ?ずりぃ俺もそれやりたかった」
「あはは。ていうかあっちゃん、予想以上にブレザー似合うね。中学の学ランも良かったけど」
そんな嬉しい事言いながら、歯を見せて笑う。眩しすぎて、思わず目を細めた。
俺が告白を決めた理由がこれだ。どんなに必死に頑張ったって、もう気持ちを抑えきれない。
ああ。好きだ。好きだ。好きだ!
「好きだーーーーー!」
ガシャリとブランコを揺らしながら、衝動的に立ち上がる。その勢いに、優樹は体をビクリと揺らした。告白というより大声にビックリしたのだろうか。元々まん丸の目をさらにまん丸にして固まってしまった。
「驚かせて悪い!俺!優樹のことが好きだ!すげぇ好きだ!男だとか!そんなこと全く気にならないほど好きだ!優樹そのものが好きだ!その存在が好きだ!今まで通りでも嬉しいけど!もっとお前に近づきたくなった!大切なお前にずっと隠しごとしてんの!無理ってなった!」
思ってたこと、全部一気に吐き出す。ずっと言いたかったこと。今しかないから、全部。
「つまり!あれだ!俺と付き合ってください!」
腰を直角に曲げて、右手をグッと前に突き出す。「喜んで」か。「ごめんなさい」か。ギュッと目を瞑りながら、優樹の第一声を待つ。こめかみからツーっと汗が流れて、顎をつたって落ちていった。
「あっちゃん」
「おう!」
「返事の前に、自分からも言わなきゃいけないことがある」
予想していたどれとも当てはまらない展開に、少し顔を上げて優樹を見る。彼は少し困ったように微笑むと、ベンチコートをバサリと脱いだ。
「へぇ、すげぇ可愛いセーラー服じゃん」
声に出してから、自分のセリフに違和感を感じる。セーラー服?え?なんで、スカート!?
「ごめん、あっちゃん。自分、女なんだ」
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