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ピカピカの新しいブレザーを着て、家の隣にある寂れた公園のブランコに腰をかけた。ギギっと不快な音が響くが、それも今は気にならない。
やってやる。やってやるんだ。
ポカポカと温かい日差しを浴びながら、腹の底から闘志を燃やす。
俺、田中中は今日!幼馴染の一ノ瀬優樹に!告白する!
膝の上で組んだ手をグッと握りしめて、段取りを頭の中で整理する。
もともと今日は、四月から通う高校の制服をお互いに見せ合おうと約束した日だった。待ち合わせ場所はいつものココ。優樹ん家と俺ん家の間にある、お馴染みの東西公園。思い出の詰まったこの場所は、告白にはぴったりだ。
俺と優樹は一度も同じ学校に通ったことがない。公園を挟んで俺ん家は東、優樹ん家は西の学区になるので、俺は東小学校、東中学校、優樹は西小学校、西中学校でそれぞれ学校生活を送った。
だから、優樹と遊べるのは決まって放課後だ。遊具もほとんどない。あるのはベンチとこの錆びたブランコだけ。それだからてんで人気のないこの公園は、小学生の俺たちにとって最高の秘密基地だった。
学校が終わり、家に帰ってランドセルを部屋に投げた後、毎日ココに集合してた。あの頃の優樹は、ポチャポチャと太っていたから走るのもすげぇ遅くて。いつも俺が先に到着してた。
「おせーぞ、ユーキ」って言うと、「ごめんね、あっちゃん」って。トテトテと一生懸命走りながら、目一杯、俺に手を振るんだ。
そんな見た目だからか、たまに優樹のクラスメイトが通りかかると、彼に悪口を言ったりした。「あ、太っちょ男女だ!」なんて。優樹は声が女の子みたいに高かったから、そんな風に言われていたのだろう。
一発殴ってやろうと腕をまくると、優樹は決まって俺のTシャツを引っ張りながら、静かに首を横に振ったんだ。
「いいんだ。自分は気にしてないから」
こんな酷い悪口言われてるのに、笑顔でサラリとかわす優樹はすげぇと思った。大人みたいで尊敬した。そん時から、なんとなく意識し始めていたんだと思う。
でも、好きって自覚したのは、中学生になってからだ。
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