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私がその力を初めて知ったのは小学生の頃だ。
それが恋か愛かはわからなくとも私は同じクラスの高橋くんが好きだった。
若さゆえの行動力か、私は毎日彼に話しかけていたのだが、ある日ピリッとした胸の痛みを感じた。
静電気かな。
そう思った四日後、事件は起こる。
「好きです!」
高橋くんに告白されたのだ。
嬉しさと驚きの入り混じる中で私はもちろんOKの返事をしたが、別々の中学校に進んだのを機に自然消滅してしまった。
中学校に入学してからも何度か同じことが続いた。
初めの頃はこれが女のカンってやつかと思っていたが、そう何度も繰り返されるとこれはもう一種の超能力だと認識を改めた。
私はこの能力を『告白予知』と呼んでいる。
胸に小さく弾けるような痛みがあってから、四日後に告白イベントが起こる。
この四日後というのがネックだった。
告白予知ではどこで誰が告白するかはわからない。けれど『誰が』については大体予想がついてしまう。そのとき私が仲良くしている男子だ。
あの彼に告白されるんだ。そうわかってから告白まで時間があると、その間につい余計なことを考えてしまう。
私は彼と付き合えたら嬉しいのか。
私は彼とずっと一緒にいられるか。
私は彼のことが本当に好きなのか。
そんな風に色々と考えてしまっては疲れ果て、結局私は彼の告白を断ってしまうのだった。
告白を断ると、彼らはみんな悲しそうな顔をした。私はその傷ついた顔を見たくなかった。
それなら告白をされなければいい、と考えたこともある。
けれど一度予知してしまえば、その告白はどうしても避けられなかった。
学校を休んだり、あらかじめ「私、彼氏いるんだよね」と嘘をついたり、迫り来る告白イベントに何度も抵抗を試みた。しかし最後にはどうしても告白される。
道筋は違えど、彼らは私に何度も同じ言葉を口にした。その度に私は彼らを傷つけた。
未来は変えられない。私はそう悟った。
私は既に決まっている出来事を少し早めに知ることができるだけなのだ。
「いらなかったなあ、こんな超能力」
この力のせいで彼らの悲しむ顔をたくさん見てきた。いくら傷つかない断り方を模索したところで結果は変わらない。
君を好きになって良かった、と笑っていても、心は泣いているのが見て取れた。
結局私は彼らを深く傷つけてしまう。みんなの本気が伝わるから余計に辛かった。
こんなの憧れるようなもんじゃないよ。
今朝の鈴鳴くんとの会話を思い出しながら、私は誰にも聞こえない声で呟いた。
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