億日紅

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桜の下に寝そべる。 ウィキラが、アトヤが、そうしていたように。 風に影が揺れて眩しい。 眼を閉じる。 瞼が温かい。 その時。 頬に。 何かが触れた。 眼を開ける。 「え…」 薄紅の雫が、舞っている。 桜が。 散っている。 なぜ。 「今日は、  あれから、  この桜が咲いてから、  何日経った…?」 電子脳が計算をする。 273年8ヶ月と、256日。 いつのまにか、一億日が経っていた。 「不老不死など、  完成していなかったのですね」 その名の通り、一億日の花だった。 見届けろとは、このことか。 「やっぱり、勝負は私の勝ちですね」 この桜は、生きている。 死んでいく。 この世界にひとり。 私だけが残される。 だから、あなたが嫌いなのだ。 -------
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