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業者さんは二人で来ていた。車は買い取られ、書類を書いた後、すぐに持って行かれた。
一人が社用車に乗り、もう一人が母さんの車に乗り、二台は連なって走っていった。
がらんとした家の庭は、砂利だけが残っていた。
「雪かき、せんと」
砂利の庭には所々、雪が残っていた。そういうのが気になる性分なのだ、母は。
「いい加減にして」
わたしは言ってやった。
足を引きずっている人が、雪かきするのか。しかし母は、けろっと「何かしていないと」と言うのだった。
「買い物どうすんのよ」
「アンタ若いのに知らんの、毎日宅配サービスがあるんだよ」
「病院とか、色々あるじゃん」
「その時は、アンタ頼むわよ」
母には、感傷はないように見えた。
もしあったとしても、娘の前で出さない程度の理性が働いているのだろう。
さて、と立ち上がり、座敷のテーブルの上を片付け始めた。
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