P10 【掃除の時間】

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P10 【掃除の時間】

咲也くんとは、 以前は隣通しだったのだけど バレンタインのあとに行われた 席替えのくじで ものの見事に 端と端の窓側と廊下側で離れてしまった。 それまではちょっとした休憩時間に 会話を交わしてたけど きっかけがなくなった今は 直接話すことはなくなってて この3週間近くはまともに話してない。 だから 朝、話しかけてくれたのも 今日の昼休み、話せたのも すごくうれしかったんだ。 じんわりと 涙が溢れてきそうになるから もう考えるのやめなきゃ。って ほとんど授業は耳に入らなかった。 キーンコーンカーンコーン 「掃除すっぞー!」 7限目が終了して掃除の時間になった。 このあと、上着が汚れないよう脱いで、 白いブラウスの 袖口ボタンを緩めたあとに、 しわが出来ないようくるくる巻いて 袖を肘まで、あげる。 暖房があまり効いてない廊下で ブラウスとスクールセーターだけでは寒いのだけど。 「水道行くね。」 「うん。ひよたん、がんばって」 同じ教室掃除の詩音に伝えてから 廊下に向かう。 そこにある水道の掃除が私の当番部分。 水まわりをきれいにするための スポンジとクレンザーを出してたら 授業終わりの 担任の(あや)ちゃん先生が 私のそばを通り過ぎようとしたけど 立ち止まった。 ーーーうん? 「今井さん、  いつもきれいにしてくれてありがとね。」 ーーーうんうん 速攻で頷いた。 何気に冬の水道掃除の当番は苦行なのを 気づいてくれてたんだー。 ジーンとその言葉に感動してた背後で 廊下掃除の男子2人組が モップの柄の方を ガチャガチャ叩き合いだした。 「お前、ちゃんとモップしろよなー」 「お前もちゃんとやれー」 ハッとその様子に気づいた彩ちゃんが キリっと、きつめの表情に切り替えて 「ふたりともそんなことしてたら危ない!  ちゃんと掃除しなさい!」 って男子の方に走ってく。 男子は 「あやちゃん!!こわーーーい!!」 って それを茶化してまた逃げ回ってるところに 教室のゴミ捨てに出ようとした 風帆が 「もう高校生なのに、そうゆうのやめなよ?!」 って先生の横で参戦する。 いつも掃除はこんな感じ。 不真面目男子に ちょっと呆れた気持ちだけど あれは、担任と評議員に任せて 私は私の仕事を始めることにした。
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