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P8【昼休み】
ゆとりのない1日は、
いつまでたってもゆとりのないままだ。
とうとう午前中は
あれから咲也くんとも話せず
気がついたら 昼休みになっていた。
あの時、水沢さんが言ってた体育はなかった。
どっか、
もやもやばっかり残ってる自分が
ちくちく痛い。
「ひよたん 今日元気ないね。」
亜優は ずっと心配してくれた。
開いたお弁当の中に
バレンタインの時にも入ってた
小さなトンカツ。
『ホワイトデーがんばって!』
のママからのメッセージ。
でもね。ママ。
なんか今日だめだ。
食欲もなくなってきた・・
「みてみて ひよたん」
と
亜優の声が 急に
ヒソヒソ声になった。
ーーーなになに?
お向かいの校舎の1階は
3年生の教室と職員室。
今は自由登校期間中で
ほとんど先輩たちは自宅学習だ。
誰もいないはずの場所に
カップルがいる。
亜優と目が合わせる。
うんうんと頷きながら
どちらも息まで潜めてしまう。
お弁当を食べる手を止めて
そのまま様子を見てた。
2人は何か会話をしてて
しばらくして
男子がカノジョに何かを渡した。
「…お返しかな…」
そうかもしれない。
「あそこで告白したら
両想いになれるもんね!」
ちょっとだけ亜優の声のテンションが上がる。
【うちの学校の伝説のひとつ】
『3年校舎で
バレンタインに告白したら
100%両想いになれる』
を思い出した。
「あー 女の子泣いちゃったよ!」
「嬉しかったんだね」
お弁当食べながら楽しそうに
実況を続ける亜優に頷きながら、
その場所を見続けた。
バレンタインの日
いつまでも勇気が出なくて
もう渡せないかなってあきらめてた放課後に
やっと咲也くんに渡せたチョコレート。
最後まで取っておいたトンカツ食べながら
学校で告白した方が良かったのかなって
ふと思った。
----------いいなぁ…
ぼんやり見てたら
「はーーーーい!!
女子のみなさーーーん!!」
「お待たせしましたーーーーーー!!!」
男子の声が黒板前から響いた。
「なになに???」
「どしたの?!」
声の聞こえた方を見ると
そこには
2組男子が勢揃いで並んでる。
白地に水色のリボンが施された箱を
高々とあげて男子評議員の石塚くんが
声を張り上げた。
「感謝を形で返しまーーーーす!!」
石塚くんの声をきっかけに
プレゼントの入った紙袋を持った男子たちが
おのおのと女子の方へ散ってきた。
「すごーい!お返しだぁ!」
「わぁ、ありがとー!」
クラスのあちこちから
それを受け取ったひとたちのお礼が聞こえる。
男子のテンションもあがって
「うぉい!うぉい!」って
掛け声みたいなのも聞こえてきた。
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