隻眼の鴉

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隻眼の鴉 俺の眼は、生まれつき色素が薄い。 しかも、右目だけ。 視力に異常はないが、いや、ないとはいいきれないが、暗闇で仄かに赤く光る。 そして、普通の人間には見えるはずの無いものが見える。 赤外線スコープのように、対象のものの過去が見えるのだ。 それは、無機物であっても、有機物であっても、変わりはない。 千里眼というには、少しずれている。 そんな万能なものではない。 どちらかと言えば、忌み嫌われる側だ。 暗闇で光れば、気味が悪いだ、化け物だと囃し立てられ、見えたものを口に出せば、獣憑きだ、頭がおかしいだと揶揄される。 そんな俺が、日の当たる道を歩める筈もなく、人から逃げるように陰の落ちる方へと生き長らえてきた。 だが、人間生きていれば何かしら役に立つもので、今はこの眼のお陰で、飯が食えるという有り様だ。 表からは介入出来ない裏道に滑り込む。そして、その闇の情報を手に入れる事で日銭を稼いでいる。 依頼主は有名人や、闇家業の人間、それから、警察。 堅気の者が知り得ない裏の世界。 なんだ? お前さんも俺に仕事くれるのかい? 今度は、どんな事件が絡んでるんだい? ああ、手数料は五割前払い。 成功報酬として、残りを後払いだ。 さあ、どうするんだい?
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