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正確には、身に覚えがありすぎるといったところだろうか。
己を狼の半身と言うならば、当然、その片割れであるもう1つの半身も存在することになる。
それは恐らく。
否。
十中八九、あの「異形の王」を示すのではないか。
『お前ら………あの害虫の親玉について、何か知ってやがるのか?』
『害虫、ときたものですか。まぁ、色々と質問はありますでしょうが、全てを包み隠さずお答えしますよ。我々にご同行いただくことが条件ですが。』
『お断りだね。』
『ならば、力ずくで連れ帰る他ありませんな。あなたの確保に、多少の手荒な真似は許可されていますので。』
『それはいいな。こっちも、お前を痛めつけてから、じっくりと知りたいことを聞き出してやるよ。』
『こ、こら、てめぇら、さっきからなにをわけのわから』
イツキががなりかけた言葉を遮るかのように、弾かれたように飛び出していったのは、ミッターナハトだった。
『なッ………!?』
『速いですね。』
イツキとアイは、同時に驚愕した。
バーニアを全開にした推力は無論、機体の膝の力を抜き脱力。
その際に生じる落下エネルギーを爪先に乗せ、一気に開放することで突進力を数倍まで跳ね上げている。
機体性能に加算される、パイロット自身の技術が融合し、初めて可能となる高等操縦法だった。
ただのダッシュ、それだけで伺えるとてつもないシンヤの実力に、面食らったのはデニスも同様である。
『ッ………!!回避………!!』
バーニアへの負荷など知ったことかと、バーストフレアを巻き上げながら2転3転、なんとかかんとかといった体で空中へ逃れてゆくデニス機。
回避それのみに注力した、緊急避難だった。
なりも降りも構わず、逃げの一手を選択せざるを得なかったのである。
『かわした………!!それなりに、やるな………!!』
シンヤの言葉は、動揺も高揚もない、自然なものだった。
それは、まだまだ余裕を残してのファーストアタックだったことを意味している。
『あ、あの野郎………!!それなりに、やるじゃねぇか………!!』
『ええ。これは、好機と見るべきでしょう。』
『は?ア、アイ、お前何言って………』
『こちら、ライラプスGC。ミッターナハト、応答願います。』
『聞こえてるぜ。なんだよ?』
『単刀直入に申し上げます、シンヤ・ナンブ。我々にご協力願えないでしょうか?』
『な、なんだとォ!?』
イツキは思わず、素っ頓狂な声をあげてしまった。
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