第三十八話:絶望の荒野

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正確には、身に覚えがありすぎるといったところだろうか。 己を狼の半身と言うならば、当然、その片割れであるもう1つの半身も存在することになる。 それは恐らく。 否。 十中八九、あの「異形の王」を示すのではないか。 『お前ら………あの害虫(ムシ)の親玉について、何か知ってやがるのか?』 『害虫(ムシ)、ときたものですか。まぁ、色々と質問はありますでしょうが、全てを包み隠さずお答えしますよ。我々にご同行いただくことが条件ですが。』 『お断りだね。』 『ならば、力ずくで連れ帰る他ありませんな。あなたの確保に、多少の手荒な真似は許可されていますので。』 『それはいいな。こっちも、お前を痛めつけてから、じっくりと知りたいことを聞き出してやるよ。』 『こ、こら、てめぇら、さっきからなにをわけのわから』 イツキががなりかけた言葉を遮るかのように、弾かれたように飛び出していったのは、ミッターナハトだった。 『なッ………!?』 『速いですね。』 イツキとアイは、同時に驚愕した。 バーニアを全開にした推力は無論、機体の膝の力を抜き脱力。 その際に生じる落下エネルギーを爪先に乗せ、一気に開放することで突進力を数倍まで跳ね上げている。 機体性能に加算される、パイロット自身の技術が融合し、初めて可能となる高等操縦法だった。 ただのダッシュ、それだけで伺えるとてつもないシンヤの実力に、面食らったのはデニスも同様である。 『ッ………!!回避………!!』 バーニアへの負荷など知ったことかと、バーストフレアを巻き上げながら2転3転、なんとかかんとかといった体で空中へ逃れてゆくデニス機。 回避それのみに注力した、緊急避難だった。 なりも降りも構わず、逃げの一手を選択せざるを得なかったのである。 『かわした………!!それなりに、やるな………!!』 シンヤの言葉は、動揺も高揚もない、自然なものだった。 それは、まだまだ余裕を残してのファーストアタックだったことを意味している。 『あ、あの野郎………!!それなりに、やるじゃねぇか………!!』 『ええ。これは、好機と見るべきでしょう。』 『は?ア、アイ、お前何言って………』 『こちら、ライラプスGC。ミッターナハト、応答願います。』 『聞こえてるぜ。なんだよ?』 『単刀直入に申し上げます、シンヤ・ナンブ。我々にご協力願えないでしょうか?』 『な、なんだとォ!?』 イツキは思わず、素っ頓狂な声をあげてしまった。
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