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『へぇ………!!』
イツキの憎まれ口が止み、表情から笑みが消えた。
司祭の発する勝負手の気配を、気迫を、直感的に感じ取ったのである。
『イツキ。ここは、フライヤークロスの機動性を活かし、少しずつ、確実に削っていくことをお進めします。』
『いや。それじゃあ、ダメだ。』
『理由を聞かせてもらいたい。』
『喧嘩は、ビビったら負け。そういうこった。』
『意味不明。なんの解答にもなってません。』
『うるせぇ!!四の五の言わず、エンジンをフルドライブだ!!お前の言う通り、フライヤークロスの機動性を利用した攻撃で決着をつけてやる!!』
『まったく、いつものことながら、合理性の欠片もないことですね。』
ともすれば、愚痴とも取られかねない発言をしつつも、エンジンの回転数を上げてゆくアイ。
それを確認したイツキは、満足げに、しかし小さく笑みを浮かべ、操縦桿を強く握り締めた。
対峙し合う、ライラプスACと、指揮官用エルシュナイデ。
風が荒れ狂う荒野の上空で、まるで西部劇の早撃ち対決のように1対1でにらみ合い、たっぷり10秒は過ぎただろうか。
『………全ての生命に、正しき死を!!』
先に動いたのは、司祭のエルシュナイデだった。
単純なスピードで言えば、ライラプスACに分がある以上、先手を取り、主導権を握りたいと考えるのは間違った選択ではない。
『速い………!!』
掛け値なしの全力全開、後退など一切考えていない突撃だった。
それはイツキが漏らした言葉通り、凄まじい速さと、必殺の意思に満ち溢れている。
『オォォォォォォォォォッ!!』
エルシュナイデの両手に握られたメガプラズマカッターが、一際大きく膨れ上がった。
恐らく、兵装のリミッターを強制的に無視したのだろう。
もしも外したなら、武器どころか腕そのものが砕け散りかねない威力。
背水の覚悟を決めた者だけができる戦法である。
防御など論外。
下手な回避など、追撃を許す隙を生むだけとなる。
ならば。
『ギリギリまで引き付けて、カウンターだ!!』
『………』
アイが無言だったのは、イツキの解答が半分は正解だったからだ。
要は、紙一重で見切った上で反撃に移るということ。
なるほど、言葉にすれば簡単である。
問題は、そんな高度な回避マニューバーを、戦闘経験値の浅いイツキにこなせるかどうかという点だ。
だからこそ、何も言わずに賭けたのだ。
イツキの内に眠る潜在能力が、ここ一番で、僅かでも発現することに。
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