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『………』
そう。
生命反応など、1分前には既に消えていたというのに。
にも関わらず、動き続け、戦い続け、こちらに大いなる損害を与えたのだ。
つまり、己らは死者と戦っていたことになる。
『し、司祭………』
信徒達もそれに気づいているのか、敵を打ち倒し、勝利したというのに、怯えた様子を隠せていない。
あらゆる生命に、正しき死を。
彼らの教団の教義であるが、果たして、眼前にある「死」は、一体どのような「死」だったのだろうか。
しかし、部隊を率いていた司祭と呼ばれる男は、そういった信徒達とは別の事案に怯えていたと言っていい。
のべ100機以上にも渡る戦力を貸与された、磐石なはずの任務だったというのに、この体たらく。
教団よりの叱責、咎めは確実であり、最悪司祭の立場を降格も有り得る。
これ以上、時間をかけるわけにはいかない。
あのレイブンMk‐Ⅱと、そのパイロットが命を掛けて守ろうとした、朽ちかけた軍事基地の内部に隠されているだろうもの。
それは、彼ら「教団」が追い求め続けたものであり、障害が排除された今、一刻も早く持ち帰らねばならない。
『これより、あの軍事基地に突入する。皆も続け。』
司祭のエルシュナイデが、1歩を踏み出す。
しかし、それに続こうという者はない。
『………?』
そう。
信徒達は、恐れていたのだ。
あのレイブンMk‐Ⅱが、もしも「死」を超越した存在だとしたら、生命反応が途絶えた程度で迂闊に近づくのは危険だと思っているのである。
『き、貴様ら、何をモタモタと!!これは立派な背信行為だぞ!!』
『………』
『も、もうよい!!動かぬと言うのであれば、この私が司祭の名を以て正しき死を………』
刹那、司祭のコックピット内部に、攻撃警報が響き渡った。
『なッ!?』
飛来する、無数のエネルギー弾。
すんでの所で回避は成功させた司祭だったが、驚愕からの思考の混乱は避けられない。
あのレイブンMk‐Ⅱが、仲間に宛てただろう通信は、既に傍受していた。
援軍の到着にしては、早すぎる。
『お、おのれ!!一体何者だ!?』
エネルギー弾の出所だろう、己らの位置より僅かに離れた小高い丘へ目をやる司祭。
そこには、見知らぬ人型機動兵器が1機と、小型の戦闘機のようなユニットが1機、こちらへ銃口を向けていた。
『ターミナスエンジン、出力グリーンゾーン。照準良し、反応良し、機体の操作も軽い。ご機嫌だね、このライラプスは!!』
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