第三十七話:魔犬は吠え、孤狼は目覚める

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不遜。 傲慢。 歯に衣着せぬどころではない、明確過ぎる挑発に、司祭ら教団の怒りは頂点に達する。 『教団司祭が、信徒らに命ずる!!あの不埒な教敵を、なんとしてでも討ち滅ぼせ!!』 あの軍事基地にあるだろう「目的」が同じな以上、激突は避けられないという判断もあり、司祭はライラプスへの攻撃命令を降した。 たかだか1機、「奴ら」がやってくる時間まで、余裕を持って墜とせるとの公算である。 『敵部隊、戦闘態勢へ以降。標的を、こちらへ絞ったようです。』 『あらら。優しく忠告してやったつもりだが、血の気の多いことだな。』 『好都合でしょう。あなたのライラプスと、僕が制御する戦闘支援用補助ユニット、DOGの慣らしには、ちょうどいい相手です。』 『それもそうだな。よーし、盛り上がってきた!!3分で終わらせるぞ!!』 『3分?』 『なんだよ。無理なんて言うんじゃないだろうな?』 『否定します。2分で充分だと思ったまでですから。』 『言ってくれるじゃねぇか。それじゃあ、2分で終わらせるとするぜ!!』 ライラプスにDOGが、バーニアを全開に飛び出していったのと、教団の残党が怒号と共に加速を開始したのは、全くの同時だった。 ◯ エルシュナイデ。 「こちら側」の世界から見たいわゆる並行世界、「向こう側」の世界において、パーソナルトルーパーと呼ばれる兵器の最終系とまで謳われた機体である。 飛行ユニットに小型テスラドライブの搭載。 GリボルバーとGレールガン、ツインビームカノンによる射程距離確保。 高い運動性を始め、軒並み高水準に仕上がったスペック値。 あらゆる状況へと適応可能なカスタマイズ性の広さなど、なるほど量産兵器としては非の打ち所のない機体だろう。 『陣形を組みつつ、敵機を包囲!!たかだか1機、集中砲火で粉砕してやれ!!』 司祭の指揮は、一対多数の戦闘において、数の勝る側の判断としては、極めて正確だったと言える。 残存する計9機のエルシュナイデ部隊は、たちまちライラプスの四方八方へ陣取り、銃口を合わせてきた。 『来ますよ、イツキ。』 『わかってるっての!!』 『僕はターミナスエンジンの制御と、DOGの操作で手一杯のため、メインの操縦はイツキ頼みです。迂闊な被弾で墜ちるなんて、真っ平御免ですので。』 『だから、わかってるって!!行くぜ!!』 ライラプスの取った戦法は、至極単純。 己の真正面にいる敵機へ向かって、これまた真っ直ぐ、一直線に突撃を仕掛けてきたのである。
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