第三十七話:魔犬は吠え、孤狼は目覚める

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『げ、迎撃!!』 意表を突かれたのは、信徒である。 この状況で、微塵も臆することなく、最も単純なやり方で包囲網の突破を図ってきたのだ。 よほど腕に自信があるのか、はたまた機体の性能が秀でているのか。 いずれにせよ、狙われたエルシュナイデは、構えていたGリボルバーの引き金を引き絞り、ライラプスに向け無数の弾丸を発射する。 他のエルシュナイデらも、ライラプスへ向けあらゆる角度から援護射撃を放ってきた。 『エネルギー出力、急上昇。』 『紙一重でかわす!!』 ライラプスの背部バーニアが爆炎を上げ、機体が急加速。 その余りの速さに、真正面から放たれたGリボルバーは僅かに照準を逸らしてしまい、イツキの宣言通りにライラプスの装甲板表面を削っていった。 『なッ………!!』 射撃という攻撃に対し、急加速によるチャージを仕掛けるというのは、実は意外に理に叶っている。 何故なら、銃弾という礫は、基本的に。 つまり、 相手が、己が、ほんの少しでも照準を違えたなら、弾丸はそののだ。 信徒らは、大多数で囲み、距離を取り狙いをつけているという状況に、知らず知らず油断していたのだ。 そこへまさかの正面突破。 これでは、落ち着いて狙いをつけろという方が難しい。 そして、相手の加速度が当初の予測を上回っていたとなれば尚更だ。 『ウォォォォォォォォォッ!!』 もっともそれは、己に銃口が向けられているという状況下で、高速で飛来する弾丸へ、自らの意思で加速するということ。 言うは易いが、実行するのはあまりにも難すぎる。 それを可能としたのは、ライラプスのパイロットであるイツキのメンタリティ。 勇気か。 否。 『さすがイツキ。頭を空っぽに突撃させたら、右に出る者はありませんね。』 『いちいち言い方がムカつくんだよ、ポンコツAI!!』 ライラプスが構えた実体剣、コーティングソードが大上段から振り下ろされ、エルシュナイデを襲う。 『う、うわァァァァァァァァァッ!!』 一刀両断。 初撃の弾丸を外され、完全に浮き足立っていたエルシュナイデは、防御も回避も叶わず真っ二つとなり、爆散してしまった。 『敵陣に乱れを確認。好機です。』 『よし!!ディバイデッドライフル、セット!!』 ライラプスが、背面腰部に取り付けていた携行兵装、ディバイデッドライフルを構え、エルシュナイデ部隊へ狙いをつける。
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